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日立総合計画研究所・編

 電子投票は、投票用紙に手書きで記入する代わりに、コンピュータの画面で立候補者や政党を選んで投票する方法です。紙と手書きによる従来の投票方法に比べて、投票時間終了後は短時間で当選者が判明するという利点があります。そのほか、人の手による開票作業は不要になり、その分、選挙にかかる費用を大幅に節減できること、さらには疑問票や無効票も大幅に減るというメリットもあります。

 電子投票の実施にあたっては、3つの段階が想定されています。第一段階は、有権者が指定された投票所に出向いて投票機から投票する方法です。第二段階では、指定された投票所以外でも投票が可能となります。これによって、旅行先などでも近くの投票所で投票が可能となります。さらに第三段階として、投票所に出向かなくても、自宅のパソコンから投票できるようにすることも検討されています。国内で行われた電子投票(後述)は第一段階に当たります。

岡山県新見市の電子投票の様子

岡山県新見市の電子投票の様子。詳しくは当サイトのフォトレポートケーススタディを参照。
 日本で初めて電子投票が実施されたのは、2002年7月、岡山県新見市の市長・市議選においてのことです。その後2003年2月には、政令指定都市では初めて、広島県広島市で市長選の電子投票が実施されました(県内の一部地域のみ)。この新見市と広島市のほか、宮城県白石市や福島県大玉村などでも条例が整備されるなど、電子投票の実施に向けて関連する条例の制定を進めている自治体も増えています。

 また、現状では国政選挙における電子投票は認められていませんが、片山虎之助総務大臣は国政選挙への電子投票の導入に対しても積極的な姿勢を示しており、今後検討が進められるものと期待されます。日本の電子投票システムは、海外での評価も高く、国内に先行してイギリス政府のモデル事業であるノリッジ市など海外の選挙で使われました。

 日本での電子投票の流れは次の通りです。有権者は、選挙管理委員会から送付される選挙人カードを投票所に持参し、専用のカード(磁気カード、ICカードなど)と交換します。電子投票の端末は、誰もが利用しやすい簡単なシステムにすることが求められており(総務省「電子機器利用による選挙システム研究会」)、タッチパネル方式など一般になじみのある方式を採用することとなっています。

 この端末機にカードを差し込むと、画面に候補者の名前が表示され、候補者の名前を指で触れることによって投票を終了します。投票結果は、フロッピーディスクやICカードなどのメディアに記録されます。こうして各投票所から集められたメディアを開票所で集計するのです。

不在者投票の処理、オンライン化などが課題

 今のところ、電子投票はいくつかの問題を抱えています。まず、投票所と開票所をオンラインで結ぶことが認められていないため、選挙結果をオンラインで伝送できず、投票結果の記録されたメディアを人手で搬送しなければなりません。また、不在者投票の電子化は認められておらず、従来通りの方式で手作業での開票が必要です。さらに、電子投票によって作業の効率化が図れるものの、電子投票システム導入の初期費用がかさみます(総務省の試算によれば、有権者10万人規模の都市で1億7110万円の費用が必要)。

 こうした問題への対応を進めていくことが、今後電子投票を普及させていく上で課題となります。もっとも、将来を展望すれば、電子投票は民主主義のあり方を大きく変える可能性を秘めていそうです。なぜなら、電子投票という新たなインフラによって、現在よりはるかに、容易に民意を集約できるようになる可能性があるからです。国民は、様々な政策課題に対して、わざわざ政党や議員を通して自らの意思を反映しなくとも、国民投票によって直接示すことが容易にできるようになるのかもしれません。そうなれば、これまでの間接民主主義のあり方も大きく変わる可能性もあります。

 海外の動向にも触れておきましょう。現在、何らかの形で既に電子投票を実施している国はオランダ、ベルギーなど既に10カ国以上で、導入準備を進めている国も40カ国以上にのぼります。米国は他の国に比べて公選職が圧倒的に多いため、投開票の機械化に早くから取り組んできました。一方で、2000年の大統領選挙の際には、フロリダ州パームビーチ郡のパンチカード方式での投票の判定をめぐって、最終結果が出るまでに長時間を要することとなり、大きな問題となったのは記憶に新しいところです。当時、全米の約三分の一がパンチカード方式を使用しており、その後、連邦予算を投じて電子投票を推進しています。