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日立総合計画研究所・編

 電子政府構築において各国が第一に取り組んだのは、ITを活用することによって、政府・公共部門も民間企業に比肩しうる革新的な業務効率の向上を実現することです。

 この目標を実現するためには、行政業務の全体効率化が必要です。実際、各国とも電子政府構築に取り組む以前は、政府機関ごとに業務の進め方から書類の書式までバラバラで、非効率的である場合が多くありました。ITを活用するといっても、行政組織の中にパソコンを導入したり、組織内、組織間をネットワークで結ぶだけでは、効率化の効果は限定的です。

 パソコン導入やネットワーク化と同時に、既存業務の進め方、業務そのものが必要かどうかの見直し、さらには業務や組織のあり方までを含め、根本的な変革を行うことを通じて行政業務全体を効率化すること、すなわち「BPR(Business Process Reengineering)」が重要であることが、次第に認識されるようになってきました。

 各国で様々なBPRの取り組みが行われてきたましたが、採用された方法は大きく2つに分けることができます。

 一つは、各部局が現在の業務の進め方を持ち寄って、最も良いもの、すなわち「ベスト・プラクティスに合わせる」という方法です。CIO(Chief Information Officer)を中心とした委員会などで検討するといった方策がとられる場合が多くなります。

 もう一つの方法は、各部局とも現在の業務の進め方をいったん捨て去り、すべての部局が一斉に新たな業務方式、すなわち「統合業務パッケージ(ERPパッケージ)を採用することによって、一気に業務プロセスの見直しを進める」というものです。

 前者の代表例は英国政府の各機関が共同で開発した公共部門におけるプロジェクト管理手法「PRINCE(Projects In Controlled Environment)」であり、後者の事例としては、カナダの中央政府各機関が1996年にほぼ同時に民間のERPパッケージを導入して大きな成果を上げたことが知られています。

現場の抵抗が大きく、導入した自治体はまだまだ少数

 こうした一部の成功事例を除けば、電子政府先進国と呼ばれる国においても、「行政組織の壁を越えて業務の重複を取り除き、業務の進め方を最も効率的な方法に統一することによって全体効率化を実現する」という部分にまで踏み込んだ事例は極めて限られています。効果が大きいことは分かっていても、実際にこうした作業を行うとなると各行政機関や組織の利害が錯綜するため、どの国においても例外なく大きな抵抗に直面します。

 日本でも、行政内部の既存組織の大幅な見直しまで踏み込んだ三重県静岡県や、部局間でBPRについてのノウハウの共有を行いながら、超過勤務時間の削減など具体的数値目標を設定してBPRを進めている大阪府など一部の地方自治体でしか、BPRへの取り組みは始まっていません。

 米国の連邦政府では、こうした状況を打破するため、ブッシュ政権発足後の2001年6月から連邦政府の組織の壁を越えたデータ統合と業務統合に向けた「Quicksilver」と呼ばれるプロジェクトが進められています。これは、19の連邦政府機関において行われている26のライン業務について、複数の政府機関で保有されていたデータと重複業務の整理統合を行おうとするものであり、今後の成果が期待されています。

 こうした各国の状況から考えると、電子政府の構築は「In-G(In Government)改革」と呼ばれる行政内部の本格的な業務革新に着手することが今後の大きな課題であり、そのためには政治のリーダーシップが今後重要となるといえるでしょう。