その始まりは、米国での選挙運動におけるインターネットの利用といわれており、既に1992年の大統領選挙では、電子メールが選挙運動に使われていました。今や米国では、資金集め、選挙運動員集め、有権者とのコミュニケーションなどの面で、インターネットは選挙運動に不可欠な存在となっています。
eデモクラシーに関する取り組みは、大きく5つに大別することができます。以下、それぞれについて説明します。
【1】インターネットを通じた議会・法制化プロセスの情報公開 | |
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例えば、米国アリゾナ州議会では、法案の検索・追跡システムを構築し、法案を提出者、キーワードなどによって検索することを可能にしました。住民が何らかの意思決定を行うには、その判断材料となる情報が可能な限り多く開示されることが重要であり、これは民主主義の前提条件ともいえるでしょう。 |
【2】選挙運動におけるインターネットの利用 | |
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先に述べたように、米国の選挙運動ではインターネットが大きな役割を果たしています。2000年の大統領選挙では、特にネットによる寄付金の獲得において大きな効果を発揮しました。日本では公職選挙法でインターネットの利用は認められていませんが、「IT時代の選挙運動に関する研究会」(総務省)が2002年7月にまとめた報告書では、インターネットによる選挙運動を認める方向で提言がなされています。 |
【3】選挙の電子投票 | |||||
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日本では、e-Japan2002プログラムの中で「地方選挙における電子投票の促進」が重点施策として挙げられています。2002年6月には岡山県新見市で日本初の電子投票による選挙が実施されましたが、これは前者、つまり投票所に出かけて電子機器に投票するタイプのものです。 一方、欧州ではオンライン型の電子投票システムの開発が行われており、2003年にドイツ、フランス、スウェーデンなどで実証実験を行う予定です。 |
【4】電子会議室を活用した住民参加 | |
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選挙のとき以外も、住民の政策論議への参加を容易にすることで、政府と住民の距離を縮めようという取り組みです。日本では、三重県(e−デモ会議室)、神奈川県大和市(どこでもコミュニティ)、神奈川県藤沢市(市民電子会議室)など、地方自治体を中心に住民の声を行政に反映させようとする試みが始まっています。 しかし、米国では行政の電子会議室は以前ほど活発ではなくなってきているといわれています。その理由として、政策論議は専門家によって行われるべきであるという考えがあることや、電子会議室の参加者が必ずしも民意を反映したものではないという問題が挙げられます。 |
【5】電子住民投票 | |
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電子住民投票については、今のところほとんど事例はないようです。インフラ整備が進むことによって、住民が政策に対して常時自らの意思を表明することが可能になるわけですが、このような直接民主主義的な政治プロセスは、衆愚政治に陥る危険性も含みます。したがって、現時点では、住民と政治の距離を縮めることによって、議会制民主主義を補完するものというとらえ方が主流となっています。 |
今後は、eデモクラシーの進展によって、住民の声をより的確に政策に反映させることが可能になると同時に、行政・議会にとっても、住民の理解を得ながら、よりオープンな形での政策策定・実施が可能となるでしょう。eデモクラシーはこれまでの住民と政府との関係を大きく変化させる可能性を秘めているといえます。