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日立総合計画研究所・編

 ある組織が行う業務を、外部に委託することを「アウトソーシング」といいます。アウトソーシングの対象となる業務に制限はありません。資料のコピーでも、施設の建設でも、外部の組織に委託すればアウトソーシングです。ここでは、政府・自治体のIT関連業務のアウトソーシングについて説明します。

 1990年代半ば以降、インターネットをはじめとしたITが普及すると、米国や欧州などを中心に、行政部門の業務の効率化や住民に対するサービスの向上を目指してITを活用する取り組みが推進されるようになりました。その際、ITシステムの設計や構築、いわゆるSI(システム・インテグレーション)業務を民間企業に委託する形でのIT関連業務のアウトソーシングが広く行われてきました。

 さらに、米国、英国、オーストラリアなどの国では、SI業務以外にも、ITを活用する様々な業務のアウトソーシングを進めています。具体的にはSI業務以外に以下の4種類のIT関連業務がアウトソーシングの対象になっています。

【1】組織全体の業務プロセスの設計
行政部門の業務手順を、ITを活用して効率化することです。民間企業で導入が広がっているビジネス・プロセス・リエンジニアリング(Business Process Reengineering)もそのための手法の一つです。

【2】ITシステムの運用
構築されたITシステムの運用、保守、管理などを行う業務です。

【3】ITを使った一般行政業務
ITを活用して、政府・地方自治体の業務処理やサービス提供を行う業務です。ここで行政業務とは、例えば、人事、経理、調達などの内部業務だけでなく、社会保険、税金に関する業務など、住民や企業向けの業務も含まれます。

【4】結果の評価
ITシステムの運用やITを使った一般行政業務の実施結果について、個別部門ごとに測定・評価を行い、これを組織全体の業務プロセスの改善にフィードバックすることです。米国や英国では、監査法人やコンサルティング企業などに委託される事例が多く見られます。

 これらの業務を民間企業にアウトソーシングすることによって、行政部門は次のようなメリットを享受することができると考えられます。

 第一に、仕事量の増減に対応して必要な時に民間企業を利用することで、固定費を変動費化し、トータルコストを削減することができます。第二に、民間企業に委託可能な業務は民間企業に任せることによって、組織を簡素化し、意思決定を迅速化することができます。第三に、高度な専門知識を必要とする業務に関しても、利用者に高水準のサービスを提供することができます。

 日本政府は、「e-Japan重点計画」に基づいてシステム関係業務の外注化を進めています。逆に言えば、日本の政府・地方自治体のIT関連業務のアウトソーシングは、現状ではSI(システム・インテグレーション)が中心となっているという見方も成り立ちます。そのような中で、バックオフィスのシステムに加え、情報産業振興策の策定、情報関連企業の支援業務など多くの事業を一括してアウトソーシングした岐阜県の取り組みなどは、IT関連業務のアウトソーシングの先進事例として注目されています。

 今後、日本でも安いコストでより高い水準の電子政府・電子自治体サービスを提供するために、SI以外も含めたIT関連業務のアウトソーシングが増加していくものと考えられます。

総務省試算では需要効果を約1兆円/年の経済効果

 総務省は、経済財政諮問会議において了承された「共同アウトソーシング・電子自治体推進戦略」構想に基づき、各都道府県に1~2カ所データセンターを設置することを計画しています。データセンターの設置・運営は地元のIT企業が中心になって行う予定で、複数の地方自治体間で業務を標準化し、これらのデータセンターに共同で委託することによって、住民サービスの向上を図ると共に、民間にも新たな需要を創出しようとするものです。

 その際、電子申請受付、電子入札などの住民や企業に対するサービス業務、文書管理や財務会計など内部業務の両方が、アウトソーシングの対象となります。また、これらの業務を行うためのITシステムの開発についても、大学や地元のIT企業へアウトソーシングされる予定です。

 また、10月9日には「公共ITにおけるアウトソーシングに関するガイドライン研究会」を立ち上げて、地方自治体がITベンダーとアウトソーシング契約を結ぶ際のガイドラインを策定する作業も進めています。

 総務省では、アウトソーシングによって約11万人程度の雇用効果が、年間運用によって需要効果を約1兆円があると試算しています。さらに、周辺への波及効果としては年間約5.5兆円、約60万人程度の雇用効果が期待できるとしています。