■制約条件(経営資源)を4つに分けて考える

 さて、これらの利害関係者のうち、実際にシステムを“創る”地方自治体を中心に考えてみたい。ここでの制約条件としては、企業などの経営戦略、事業戦略を考える際にも使われる「ヒト」「モノ」「カネ」「技術」の4つを想定した。

・ヒト

 電子自治体の構築に際して考えるべき「ヒト」とは組織のことである。地方自治体ごとに基本的な枠組みとしての組織が存在する。システム構築全般を行う専門部門ならびに担当者を有するか?--これが一次的な検討課題となる。

 さらには、運用段階の各フェーズにおいて、それぞれ担当者が異なるはずだ。

・モノ
 「モノ」は、コミュニティに居住する「ヒト」であり、人口規模である。

 ヒトが居住することにより、一義的に税収などによる収益を確保できることや、ヒトが生産・消費活動を行う過程で第二、第三の市場が生まれ、企業などからの税収を期待できる。

 より積極的な収益を獲得する方法としては、ヒトが移動した場合に、移転されるナレッジ(情報や知識、データを総合的に集めたより上位概念のこと)に注目し、ナレッジマネジメントの観点からの収益を獲得することが検討可能である。

 ナレッジを移転可能なヒトは専門性の高い職種に属する人達であり、ITを中心とした分野が有望と考えることができよう。また、高齢時代を反映し、医療ならびに医療に準じた市場への期待は大きい。

・カネ
 「カネ」はズバリ、開発コストを指す。この場合、システム開発側が提示する開発費では“1円入札”もあるため、トータルコストを見極めるのは難しい。しかし、翌年以降のメンテナンスコストや、システムのバージョンアップを図り、陳腐化しないためのコストなども視野に入れることが大事である。

 一方、ここでは“期待リターン”を考えることもできよう。電子化により削減できるコストをはじめ、住民や自治体双方にとっての利便性の向上を考慮する必要がある。

・技術
 「技術」には、システム構築技術とともに、運用技術、利用技術などが含まれる。

■電子自治体が備えるべき基本機能とは?

 これらの経営資源を考慮し、自治体が整備すべき電子自治体の機能としては何があるのか?

 ここでは、電子自治体が備えるべき基本機能として、「マーケティング機能」「行政サービス機能」「付加価値機能」「潜在力」を掲げることとした。

・マーケティング機能

ヒトの誘致、企業立地(誘致)、市町村特産物の販売、起業など

・行政サービス機能
各種登録、申請、書類作成などの自動化

・付加価値機能
自治体固有の経営資源、活用方法に関する独自性

・潜在力
将来に向けた拡張性、パフォーマンス向上の余地

■次回以降の“フレーム”について

 以上の議論を踏まえ、電子自治体において獲得すべき「機能」と、検討すべき「制約条件」をマトリクスとした。第2回以降は、それぞれの機能を2回ずつ解説し、あるべき方向性を考えていきたい。
図
電子自治体において獲得すべき「機能」と、検討すべき「制約条件」のマトリクス

■競争優位の確立

 さらに、こうした分析をもとに、電子自治体としての競争優位の確立のためのプログラムの開発を検討することが重要となる。

 さらなる競争優位を求め、電子自治体はどの方向に向かって発展していくのだろうか? ここでは、4つの電子自治体の「型」「場」を仮説として提示し、第10回、第11回で議論を深めていく予定である。

図
電子自治体における4つの「型」

林氏写真 筆者紹介 林志行(りん・しこう)

日本総合研究所研究事業本部・主任研究員。日興證券投資工学研究所を経て1990年より現職。企業のウェブ事情、インターネットを利用したマーケティング戦略に詳しい経営戦略コンサルタント。近著に『中国・アジアビジネス WTO後の企業戦略』(毎日新聞社)、『インターネット企業戦略』(東洋経済新報社)など。個人ホームページ「Lin's Bar」に過去の連載などを掲載。