■モノ

  電子自治体にとっての「モノ」とは、「コミュニティに存在する財産」のことだ(詳しくは第2回を参照)。

図

モノに関する各機能の検討課題

Q6
電子自治体の「行政サービス」機能の強化では、「モノ」に関してどう考えるべきか?



A6
ポイントは現地化を推し進めること。そのために、最適な「モノ」を最適な「場所」から調達する

・現地化

 企業や専門家の誘致に成功し、一時的に税収を増やしても、新たな「電子自治体」が、より良い条件を提示して挑んできたら流出は避けられず、やがて「空洞化」が発生する。

 「モノ(住民、企業)」は「カネ」を多く得られるところに向かって流れる。特に、労働市場と消費市場という、クルマの両輪を有する右肩上がりの市場(例えば、東京)にすべての機能が集中しがちである。そこで、行政サービス機能を高度化することにより、貴重な「財産」の現地化を進めることが求められる。

 新たに獲得した「モノ」が既存のコミュニティにどのように組み込まれ、どのように地域の「育成システム」として成立するかを見極めることが大切である。

・現地化を進めるために、行政サービス機能として何を提供するか

 現地化で大切なのは、「すべてを現地で調達してもらう(郷土愛、お国自慢)」という意識からの脱却である。地場素材を保護し、優遇しないことには、競争の場にも立てないという現場の悲鳴は理解できるものの、「エンドユーザーが求める付加価値(バリュー)は何か?」ということを問い直せば、最適なモノを最適な場所から調達せざるを得ない。

 競争時代の電子自治体での究極の「行政サービス」は、外からの「経営資源(ヒト、モノ、カネ、技術、情報、文化)」を受け入れやすくすることであり、手続きを簡単にすることはもちろん、新たにコミュニティに加わった経営資源が空洞化の穴を埋める時に、外様として扱われたり、ダブルスタンダードの存在などを感じないような仕組みを作ることに尽きるはずだ。

 例えば、歓迎すべき企業や人材には専用の地域データベースを構築し、「人脈」「取引先」などの(地元であれば誰でも知りうるような)基礎情報を提供することなども考えられる。

 既に「カネ」「情報」を呼び水として獲得した専門家(ヒト)に活躍の場・スペースを与え、アジアから安価な素材(モノ)を導入し、精密に組立加工(技術)して、再度輸出するという新しいビジネスモデルを地域に確立することに成功した自治体も登場しており、電子自治体間競争では「現地化」の概念をいかに拡大させるかの工夫が求められよう。

林氏写真 筆者紹介 林志行(りん・しこう)

日本総合研究所研究事業本部・主任研究員。日興證券投資工学研究所を経て1990年より現職。企業のウェブ事情、インターネットを利用したマーケティング戦略に詳しい経営戦略コンサルタント。近著に『中国・アジアビジネス WTO後の企業戦略』(毎日新聞社)、『インターネット企業戦略』(東洋経済新報社)など。個人ホームページ「Lin's Bar」に過去の連載などを掲載。