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●今回は付加価値機能の後半部分を取り上げる。前回、付加価値機能では「リーダーシップ」「アウトソーシング」「ナレッジ」「特区」という4つの要因が重要であることを明らかにした。そこには、人材の移動が新たな付加価値を創造するという考えが基本にある。
●さて後半部分では、「カネ」と「技術」について話を進めたい。その点においては、「パフォーマンス」を意識し、「小さな政府」「市町村合併」をどう取り扱うか。また、「遠隔地との提携」をいかに確保するかが議論の範囲となる。

■カネ

Q11
付加価値機能の強化に際して、「カネ」については何に留意しなければならないのか?



A11
ポイントは「無駄なコストをかけないこと」「利用者にもコストをかけさせないこと」の2点につきる

 「カネ」にかかわる付加価値機能といえば、「無駄なコストをかけないこと」と「利用者にもコストをかけさせないこと」の2点だ。

 “小さな政府”を目指し、民間でできることは民間に任せる。どのような場合にアウトソーシングするのか、原則を貫くことが求められる。また、電子自治体を導入することで、迅速化、自動化と共に省力化を達成できても、コミュニティが負担しているトータルコストが削減されなければ、成功したとはいえない。

図

「カネ」に関する付加価値機能の検討課題

・小さな政府

 “小さな政府”を目指すというかけ声は昔からあった。“小さな政府”という言葉の裏には、「コストを削減する」「無駄遣いしない」という宣言が含まれている。その究極は、人員削減である。が、一定人数を保つことを定めた法律がある以上、人員は勝手に削減できない。

 一方、予算は、コミュニティの人数に比例し、中央から分け前をもらえるようになっている。なおかつ、使い道については、厳しく制限されている。

 発言力のある豊かな地方は、自らが儲けた分は自らが使いたいと主張するが、国家運営上、国として受け入れることは難しい。逆に、財政が逼迫(ひっぱく)した地方自治体では、自立への道は険しいので、中央の意向に従うことになる。

 同様に、地方自治体内でも“中央対地方”の構図は成立する。各部局は、予算をきっちり消化し、「次はこういうことをやるから増やして欲しい」というロジックが生まれる。

 これは何も自治体だけの問題ではない。民間でも同じである。要するに組織の生き残りを目指そうとすると、こうした組織行動が現れるのは当然と言えよう。

 こうした問題を解決する方法の一つは、第4回で提示した「クラスター組織を導入すること」である。クラスター組織では、常に“良い種”だけを残そうとする力が働くため、無駄をなくすことが必須となる。

 もう一つの解決方法は、マーケティングによって、コストの抑制に限界がある部分を収益でカバーすることである。

・直接的なコスト

 付加価値で最も問題になると思われるのが、手数料だ。電子自治体の登場によって、いくら手続きが便利になっても、今度は様々な電子申請を要求され、それらにコストがかかるのでは、本末転倒である。便利だからといって、「なんでもかんでも電子申請です」「公正にやっています」となると、結果として手間が増え、なおかつ手数料を含めた直接的なコストが増大してしまう。

 コミュニティの住民からは、不平不満が発せられるだろうし、沈黙を守る大衆は、より魅力的な自治体へと移動を始めることも考えられる。

 こうなると、いままで通り、アナログ申請もデジタル申請も200円あるい300円というコスト負担を念頭に、自治体経営を考えていたところを、値下げ要請に応じなければならなくなる。

・間接的なコスト

 電子自治体はバーチャルに展開できるため、ややもすると巨大な自治体を目指しがちだ。すなわち、1回の申請でオールマイティに対応できるように、考えられる関係者すべてに情報が回覧するように設計される。こうなると、自治体住民や地域への投資を図ろうとする企業にとっては、間接的なコストが増えてくる。“たらい回し”はない代わりに、どの部署に回っても手続きに必要な情報が含まれるように、「入口」で多くの申請情報の準備が必要になる。

 こうしたことを排除するためには、慣習で採用していたが実は不必要であるというものを排除するなど、リアルな部分での仕組みの改善が重要となる。

 例えば、部課内での決済システムを簡潔にすることが第一義的に必要であろう。あるいは、一度手続きをした人には、その時の基礎データなり、対応した担当者の二次的な情報が付加されていることは、最低限必要な仕組みだ。

・新たな収益の源泉(広告機能の導入)

 第4回で提示した「情報交差点」などを経由した各種電子申請では、民間も含め外部組織へのアウトソーシングを認める代わりに、広告などでの収益を確保する方法も一計だ。こうした収入によって、自治体住民の各種電子申請手数料を引き下げ、無料にする努力を図ることが、結果的に強い自治体を生み出す。

 最も広告ビジネスを導入しやすいのは、富裕層や外国人が多く居住する自治体であり、もう一つは高齢者などが多く居住する自治体だ。こうした自治体では、従来以上にその優位性が増すと思われる。

 また、観光客が頻繁に行き来する自治体や、単身赴任などを含め外部からの転入者が多い自治体などでも、広告主を獲得しやすいと考えられる。

 こうした状況では、いかにオープンなシステムを採用し、自治体の潜在的な住民に対するサービスを強化するかが戦略の成否を左右する。

林氏写真 筆者紹介 林志行(りん・しこう)

日本総合研究所研究事業本部・主任研究員。日興證券投資工学研究所を経て1990年より現職。企業のウェブ事情、インターネットを利用したマーケティング戦略に詳しい経営戦略コンサルタント。近著に『中国・アジアビジネス WTO後の企業戦略』(毎日新聞社)、『インターネット企業戦略』(東洋経済新報社)など。個人ホームページ「Lin's Bar」に過去の連載などを掲載。