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「公的個人認証サービスについて ~電子自治体と業務革新に向けて~」
猿渡知之
総務省 自治行政局自治政策課 情報政策企画官

猿渡知之氏

猿渡知之氏
 公的個人認証サービスを考えていく前提として、まず最初に猿渡氏は、行政手続のオンライン化についての考え方を示した。「公的個人認証サービスの電子証明書は、個人の存在証明となるツール」と位置付け、行政手続のオンライン化は「電子証明書を活用した社会活動の入り口に過ぎない」と強調。そして、これからの電子行政における住民との接点(いわゆる「フロントオフィス」)について、次の3つをポイントとして挙げた。
  1. 電子申請を実施するために必要な法制度の確立を受け、住民側の窓口となる受付システム(オンライン手続の入り口となる画面)の整備が必要になる。
  2. 2003年8月25日から希望者には住民基本台帳カード(住基カード)が交付されるが、このカードを使って、住民にどのようなサービスが提供できるのか?
  3. そして第3にPDAなどの携帯ツールを、今後の電子行政に取り入れるのを検討する必要がある。
  さらに猿渡氏は「フロントオフィス業務を円滑に行うためには、行政内部事務(いわゆる「バックオフィス」)のシステム確立が必要」と続けた。24時間オンライン受付が実現しても、申請書類をプリントアウトして関連部署に手渡しをしているので意味がない。また、「単に電子化するだけでなく、業務システムを見直し情報共有を進めるべきである」とした。

 続いて入力データの二重流用について言及。現状では改善されている事例は多いとしながらも、同一案件について部署ごとに再入力している業務フローを例に挙げ、「こうした重複を避けるために電子申請によるデジタルデータを複数部署で利用できる連携システムが必要」とした。オンライン申請導入を機に見直しをすることで、自治体の業務フローは劇的に効率化される点を認識して欲しい、と強調した。

 また、電子申請に必要な柱として、情報セキュリティについても言及。個人情報保護条例やセキュリティポリシーを作成するだけでなく「それがどのように運用され、どの様に守られているかが、住民に分かるようになっていなければならない」と指摘した。

■電子申請を推進するテコとしての公的個人認証

 公的個人認証の話題に移った猿渡氏は、「行政手続のオンライン化と、それに必要な公的個人認証サービスに関する法的整備は整った」「法的には紙ベースの申請も電子申請もイコールである」という点を強調した。公的個人認証サービス制度は、住民が自らの電子署名を手に入れる方法を行き渡らせる必要があることから企画されたものであり、2003年度のなるべく早い時期に運用を開始したい」という現状を説明した。また、公的個人認証サービスの利用が拡大することで、住民負担の手数料でペイできるという試算があることにも触れた。

 続いて猿渡氏は、電子署名を利用した申請の流れを解説した。

■電子署名を利用したオンラインによる申請・届出などの流れ


(1) あらかじめクライアントソフトをインストールしたパソコンから、業績期間のホームページにアクセス
(2) 利用しようとする申請・届出などのページを選択
(3) 画面に表示された様式に、必要事項を記入
(4) パソコンに接続したリーダライタに、利用者に秘密鍵が格納されたICカードをセットし、秘密鍵を使用するための暗証番号を入力
(5) パソコン画面の電子署名取り込み箇所をクリック
(6) 申請様式を送信
(7) 行政機関のサーバ-が受信

 (5)の段階で申請様式に電子署名を取り込む方法としては、電子署名を施すべき文書(デジタル情報)がICカードに取り込まれ、ICカード内で電子署名の暗号化が行われた上で、数字とアルファベットの「0123456789abcdef」を利用する16進数で羅列された電子署名が付されて、再びパソコンに取り込まれるという点を説明した。

 また(6)の申請様式を送信する段階では、「紙ベースと同内容の申請書」「電子署名」「電子証明書」の3点がセットとなって送信される点を解説。住民は、電子署名(住民本人だけが持っている秘密鍵で暗号化)と、その電子署名が確かにその住民のものであることを証明する電子証明書の2つを、ICカードの中に持っていることが、電子申請に必要となるとした。そして(7)の段階で、行政サイドは電子証明書の有効性を確認した上で、電子証明書の公開鍵で電子署名を復号・照合を自動的に実行することも補足した。

 (4)のリーダライタに関しては、20数社の事業者より「リーズナブルな金額」での提供が可能との情報を得ているとし「接触式については3000円代で提供が可能になるのではないか」としたが、非接触型リーダライタについての具体的な金額については言及しなかった。公的個人認証対応アプリケーション格納の主流になるであろう住基カードは、非接触または両用型だ。非接触型のリーダライタの価格の高さが、当面の普及のハードルになるかもしれないと言えそうだ。

■当初は住基カードでの利用が主流

 申請の流れに引き続き、猿渡氏は電子証明書の発行・交付の流れについて解説した。

■住民から見た電子証明書の発行・交付の流れ


(1) 住民が公的認証サービスのアプリケーションに対応したICカードを持参し、市町村役場の窓口に行く
(2) 申請書を提出
(3) 住民基本台帳データと照合し、申請者が実在していることを確認。さらに運転免許証などで、申請者本人であるかを確認
(4) 鍵ペア生成装置を使い、住民自身が秘密鍵と公開鍵を作成
(5) 公開鍵を市町村役場窓口に提出
(6) オンラインによって、証明書発行手続を行い、都道府県知事が発行
(7) 市町村窓口で、ICカードへ電子証明書を書き込んで交付

 (1)については、今のところは公的個人認証サービス対応のアプリケーションが組み込まれたICカードの持参が必要であるとし、今後交付予定の住基カードも公的個人認証サービスのアプリケーションに対応していることを補足。また「最終製品にはなっていない」としながら、金融機関などでも公的個人認証サービス対応のICカードを、顧客に発行する動きもあることが説明された。

 猿渡氏は「あらゆるものには信頼の根拠が必要になる」と前置きした上で、(3)の市町村窓口での公的個人認証サービス手続では「住民基本台帳制度」を信頼の根拠とすることを説明。まずは「住民基本台帳と照合し、申請者が該当市町村に存在するか」を、さらに「運転免許証などで、申請者が本人であるか」の2段階で確認することと、住民が写真入り住基カードを持参することで本人確認が可能であることを付け加えた。

 以上の発行手続を行うために、市町村が用意するシステムとしては、電子証明書発行機能などを備えたパソコンと鍵ペア生成装置の2点があるが「窓口業務には基本的には入力業務はなく、クリックのみで対応可能」となっていると報告した。

 鍵ペア生成装置を設置する場所は「各自治体の工夫に任せる」としているが、当初は住基カードで公的個人認証サービスを利用する住民が多いであろうという予測から、住基カード発行窓口の近くが、住民にとって分かりやすいのではないかという見解を示した。

 また、電子証明書の失効には住基と関連性を持たせることによって、「公的個人認証サービス側で、住所移動などに関する個人情報収集をするシステムを構築する必要がない(=システム構築のコスト不要)」「住民が公的個人認証サービスに、異動などの情報を申請する必要がない」という2点がメリットとなると説明した。  


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