(文:黒田隆明=編集部)
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浜松市は、市民からの意見・提言などをデータベース化した「市民の声システム」を2002年4月1日から運用している。手紙、ファクス、メールなど様々な媒体を通じて市へ寄せられる市民の声と、それに対する市側の回答を全庁で蓄積し一元管理することで情報共有を図ることが目的だ。データベース化された情報は全職員が閲覧・検索でき、市民への応対の参考にしたり、市民のニーズを把握し政策立案をする際の参考資料として活用する狙いもある。案件ごとの進ちょく状況を見ることもできるので、市民への回答遅延の防止など業務管理にも役立てることができる。
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■効率化された仕事の流れに合わせてシステム構築
いくらコンセプトが優れていても、現場で使われないシステムでは意味がない。浜松市のシステムがスムーズに導入できたのは、市民の声を効率的に処理するための決まりである「浜松市市民の声取扱要綱」(2001年4月)が既に策定されており、その流れに沿って業務が進むようになっていたからだ。
この「要綱」では、各部ごとに広聴取扱主管者を置き、広聴広報課経由で所属する部に寄せられる市民の声を統括処理、管理することにした。あわせて、市民の声を処理する際に使用する書式や管理票などを決め、全庁的に市民の声を取り扱う際の統一ルールを整えたのである。
「市民の声システム」は、この「要綱」で決められた仕事の流れに合わせて構築したシステムなのである。図をご覧いただければ分かりやすいだろう。グレーに色を敷いた部分(システム)は、要綱で定められた市民の声を処理する流れをIT化したものだ。
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浜松市企画部情報政策課 計画グループ主任 内藤文子氏 |
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システムがうまく動き始めたもう一つの要因としては、既に市職員がキーボードに慣れていたこともあるようだ。「市民の声システム」では、Webページ「市長のご意見箱」のフォームを利用して寄せられた市民の意見に限り、送られてきたテキストデータを自動的に取り込む機能がついている。それ以外の電話やファクス、メールなどで送られてきた声は、手入力したり、テキストデータをコピーして張り付ける作業が発生する。対応後の結果もデータとして打ち込まなくてはならない。
しかし幸いなことに浜松市では「10数年前から表計算などが使えるパソコン端末を全庁的に導入していたので、部長クラスの人でもキーボードに対するアレルギーはそれほどない」(浜松市企画部情報政策課計画グループ主任の内藤文子氏)という環境だった。このため、データ入力は、さほど滞ることがなかったのである。