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■6月23日、全国初の電子投票による選挙が岡山県新見市の市長・市議選で行われた。電子投票の集計作業はわずか25分で完了。大きなトラブルもなく、まずは無事に“日本最初のイベント”を乗り切ったと言えそうだ。成功の大きな理由の一つは、体験イベントを積極的に開催したこと。本番の選挙の前までに延べ1万2000人以上の市民に模擬投票してもらった。(文:野々下裕子)


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 岡山県新見市はJR岡山駅から特急「やくも」で1時間弱、岡山県西北部の鳥取県に接した山あいに位置する人口約2万4000人の街である。市内には岡山県の三大河川の一つである高梁川が流れ、総面積の86%を占める山林と共に美しい景観を生み出している。そんなおだやかな街が「全国初の電子投票のまち」になったおかげで大騒動になった。

 実際の投票日が近づくにつれ、取材の申し込みや選挙見学を希望する全国の自治体からの問い合せがどんどん増えてきたという。選挙前日、市内にあるビジネスホテルはどこもほぼ満室状態になり、選挙当日、市役所の向かい側にある「まなび広場にいみ」に設置されたプレスセンターにはテレビクルーや新聞記者など180人以上の報道陣が詰めかけた。65の自治体が視察に訪れ、中には観光バスをチャーターしてきた自治体もあった。

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JR新見駅前で「全国初の電子投票のまち」をアピール。
 こうした反響の大きさに新見市側も何とか電子投票を成功させようと、JR新見市駅前に立看板を設置したり、開票会場の屋根にアドバルーンを飛ばすなどして市民に投票を呼びかけていた。

 国内で正式に電子投票の実施が可能になったのは、今年2月の電磁記録投票法(地方公共団体の議会の議員及び長の選挙に係る電磁的記録式投票機を用いて行う投票方法等の特例に関する法律)施行以降である。様々な自治体が電子投票の準備を進めていた中で、タイミングよく“全国初”の名乗りを上げたのが新見市だった。

 新見市では当初、選挙にかかる費用として、投票機購入費を含む1億4620万円を予定していたが、総務省の意向もありレンタル方式での入札になったことで落札金額は250万円と大幅なコストダウンとなった。落札したのは電子投票普及協業組合(東京都千代田区)。同組合の宮川隆義理事長は「我々が10年以上にわたって普及を推進してきた電子投票を、なんとしても成功させたかった」と語る。つまり、今回は採算は度外視しての受注なのである。この250万円という金額が今後の電子投票のスタンダードになることはなさそうだ。


選挙当日の電子投票の様子。青いランプが着いているブースが投票中。
全43カ所の投票所に各1台、バリアフリー対応の投票機を置いた。

 電子投票では、「電磁的記録式投票機システム」と呼ばれる投票機を使うことになっており、法律ではタッチパネル、テンキー、ボタンなどの方式が認められている。新見市で討議を重ねた結果、市の条例ではタッチパネル方式が選択されることにした。新見市の選挙では、43カ所の電子投票所で111台の投票機を配備(予備機を含めると計154台)。各投票所には必ず1台、“バリアフリー対応機”も設置した。

 タッチパネル方式の投票機を使った投票手順は以下の通りだ。投票に要する時間は、人によって差はあるがだいたい30秒程度。銀行のATM(現金自動預払機)を使って現金を引き落すより少しかかるくらいである。投票の手順は以下の通り。

【1】郵送された投票用紙と引き換えに、投票所の受付でICカードを発行してもらう。
【2】ICカード投票機に挿し込むと、自動的に画面に市長選の候補者名が表示されるので、専用のペン(指でも可)を使って投票したい候補の名前をタッチする、あるいは「投票しないで終了する」という項目を選ぶ。
【3】選んだ名前が画面に表示される。「変更する」を選ぶと前の画面に戻り、選び直すことができる。変更は納得いくまで何回でも繰り返すことができる。投票したい場合は「投票する」を選ぶ。
【4】市長選の投票が完了し、自動的に市議選の候補者名一覧へと画面が変わる。市長選と同様の作業を繰り返す。
【5】投票が終わるとICカードが自動的に排出されるので、それを出口にいるスタッフに返却して投票終了。

新見市のサイトでは、現在も体験投票ができるようになっている。
タッチパネルに専用のペンで触れて投票する(写真は模擬投票画面)。