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■愛知県豊田市では、2002年1月末から3月にかけて、1人1枚の個人ICカードの健康保険証を市内13万6000人の被保険者に配布。各医療機関でのデータ入力や確認作業を補助するシステムを構築した。ICカードの有効性を確認できた一方、カードのコストの高さや医療データの互換性が低いことなど、本格的な普及に向けての課題も明らかになった。(文:鳥田泰正=編集部)

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 健康保険被保険者証(以後、健康保険証)がカード化されるのをご存じだろうか。平成13年2月(2001年2月)に「健康保険法施行規則及び国民健康保険法施行規則」が改正され、同年4月から健康保険証の個人カード化が決定した。今までは1世帯に1枚だった健康保険証が、1人につき1枚、交付されることになる。

 ただし、健康保険組合が厳しい財政状況にあることなどから、即時に一斉にカード化しなくてもよいことになっている。健康保険組合を管轄する厚生労働省によると、「それぞれの健康保険組合の準備が整い次第、順次カード化していけばよい。特に切り替えの期限は設けてはいない」(厚生労働省の保険局総務課 保険システム高度推進室の黒田進治氏)としている。


豊田市で配布した、3種類のカード型健康保険証
 こうした流れの中、愛知県豊田市では2002年1月から3月にかけてICカードの健康保険証を導入した。経済産業省が実施する「ICカードの普及等によるIT装備都市研究事業」の実証実験地域に採択されたことをきっかけに、3つの健康保険組合(豊田市国民健康保険組合、トヨタ自動車健康保険組合、トヨタ関連部品健康保険組合)が共同でシステムを開発したのである。カードの配布枚数は豊田市国保が3万枚、トヨタ自動車健保が8万6000枚、トヨタ関連部品健保が2万枚。合計で13万6000人の手にICカードの健康保険証が行き渡った。

 なお、健康保険証をカード化するにあたり、どのようなカードを選ぶのかは、各健康保険組合に任されている。ICカードではなく普通のプラスチックカードや磁気カードでも構わない。  豊田市の場合、ICカードの利用端末は市内および周辺地域の医療機関、保険薬局など261カ所に配布した。患者の受診時に、医療機関に備え付けのカードリーダにICカードを読み取らせ、この保険証が有効かどうかのチェックを即座に行える機能など、医療機関にメリットのあるシステムをいくつか実験として行った。実験期間は2002年3月末までだったが、その後は3健康保険組合が継続して運営している。近く、3健康保険組合と地域の医師会が協力してつくる「豊田市ICカード被保険者証運営協議会」(仮称)が、今後のシステム運営を行うことを検討している。

■一人一枚のカードで便利に

 ところで、カード化された健康保険証は以前の紙のものとどこが違うのか。



豊田市市民部
保険年金課
課長 谷澤政義氏
 まず、被保険者にとっては、カード型にすることで携帯しやすくなる。また、1人1枚の個人カードを配ることで、1枚の健康保険証を家族の間で使いまわす必要も無くなるというメリットがある。「子供のカードを管理するのがわずらわしい」「カードなのでなくしてしまいそうだ」といった声もあったが、利用者からはおおむね好評だったという。今回の豊田市の実験では対応していないが、ICチップの機能を生かせば様々な医療データとカードを連動させて有効活用することも可能になる。

 健康保険組合や医療機関にとっては、ICカードとデータベースを連動させることで業務の効率化につながる。例えば、健康保険証の資格確認作業が医療機関の窓口でその場で即時に行えるようになる。システムは24時間動いているので、深夜に訪れる患者にも対応可能だ。例えば、トヨタ自動車の健康保険組合では、転記ミスや資格喪失後の健康保険証の利用といった誤請求が月間600件ほどあるという。従来は照会に時間がかかっていたため、期限切れなどで資格を喪失している人の確認が遅れがちで、このため後からの料金の再請求など面倒な作業が発生していた。ICカード化すれば、この無駄な作業をなくすことができるのだ。