インターネットへのマルチホーミング接続を実現するための専用ロード・バランサを提供する米ファットパイプ・ネットワークスは,日本での製品販売を本格的に始める。丸紅ソリューションと正式に代理店契約を結んだほか,日立情報システムズとも契約に向けて調整中。2002年3月にも製品を出荷する。

 ファットパイプの製品は,1つの組織(企業)が複数のISPに接続してトラフィックを動的に分散させるための専用装置。同社のほかに,イスラエルのラドウェア,米F5ネットワークスが同種の製品を提供している。実際には,ファットパイプは従来からプロサイドと契約を結んでおり,一部の廉価版の製品は国内で発売済み。今回,丸紅ソリューションと日立情報と代理店契約を結んで販売体制を強化すると同時に,ファットパイプの主力製品を投入する。

 現状でファットパイプが提供する製品は4種類ある。ユーザーからインターネットへのアクセス・トラフィック,つまりアウトバウンド・トラフィックだけを分散させる「SuperStream」,「Xtreme」,インバウンドとアウトバウンドの両方を分散させる「WARP」と「SuperWARP」,そして拠点間でVPN(仮想プライベート・ネットワーク)トラフィックを複数経路に分散させられる「MultiPath VPN」(MPVPN)である。このうち,今回国内で新たに発売するのはXtremeとWARP,SuperWARP,MPVPNだ。SuperStreamについては,プロサイドが国内でハードウエアを製造し,販売していた。今後,これらの主力製品についても,その一部をプロサイドが製造する計画になっている。

 Xtremeは,SuperStreamと同じくアウトバウンド・トラフィックだけを分散させる装置。SuperStreamは,Xtremeよりも処理能力が低い廉価版で,アクセス回線の速度の合計が2Mビット/秒までが対象。Xtremeは,50Mビット/秒にまで対応できる。WARPは,ラドウエアの「LinkProof」やF5の「BIG-IP Link Controller」と同様に,DNS(ドメイン名システム)としての機能を併せ持ち,インバウンドとアウトバウンドの両方を分散させられる。さらに,アクセス回線の合計が155Mビット/秒にまで対応可能。MPVPNは,WARPの機能に,VPNトラフィックを分散させる機能を追加してある。SuperWARPはWARPの拡張版で,アクセス回線1本当たり50Mビット/秒まで対応できるうえ,VPNトラフィックの分散機能も備えている。

 アウトバウンド・トラフィックの分散方法は,ラウンド・ロビン,あて先までのレスポンス時間ベース,バックアップの3種類。通常は,pingのようなコマンドを定期的に自動実行して,その時点でレスポンスが速い経路(ISP)を選択する。この際,送信元のIPアドレスを,選択したISPから割り当てられたアドレスに自動的に変換する(スマートNAT機能)。一方,インバウンド・トラフィックについては,DNSベースでの分散。いわゆる広域負荷分散と同じ手法である。

 同社製品の特徴の1つは,ハードウエアが4U(ラック・ユニット)と大きいこと。1Uと薄型なLinkProofなどとは大きな違い。この点に関しては,ファットパイプは,あえて大きなサイズを採用している。理由は内蔵するファンの故障率を下げること。社長兼CEO(最高経営責任者)であるラグラ・バスカ氏は,「ハードウエアを小さくしようとすると,ファンも小さくなる。小さなファンで熱を十分に放射するには,ファンを高速に回転させなければならず,故障率が上がってしまう」と説明する。信頼性を高めることを目的とした製品だけに,機器そのものの信頼性向上は不可欠。このため,低速回転で済む大きなファンを採用できるように,あえて大きなきょう体を採用したという。

 国内での価格は,SuperStream,Xtreme,WARP,SuperWARPのラインアップが90万~490万円。MPVPNも,合計速度により複数のモデルがあり,130万~320万円である(いずれも日立情報システムズの場合)。(Y.K.)