グローバス・プロジェクトは米国時間で1月13日,グリッド・コンピューティングを実現するために使われるオープン・ソースのミドルウエア「Globus Toolkit3.0」の初期評価版(アルファ版)を公開した。3.0では,Webサービス技術を利用してグリッド・コンピューティングを実現するという設計アプローチ「OGSA(オープン・グローバス・サービス・アーキテクチャ)」を採用した。

 OGSAでは,「OGSI(オープン・グリッド・サービス・インタフェース)」と呼ぶインタフェース仕様に準拠した複数のWebサービス(グリッド・サービス)を組み合わせ,グリッド・コンピューティング環境を構築できる。従来,グリッド・コンピューティングを実現するための標準仕様はなく,ミドルウエアが異なると相互にリソースを利用し合えない,リソース間を連携させるための作り込みの作業が面倒--などの問題があった。XML(拡張可能マークアップ言語)ベースの標準仕様であるWebサービス技術を使うことで,ミドルウエア,開発言語,OSなどの種類を問わず,リソースを融通しあったり,データを利用したりすることが可能になる。柔軟なグリッド・コンピューティング環境を構築しやすくなる。

 例えば,自社のストレージ容量を超えるような大量のデータを,短時間に分析しなければならなくなったとする。こうした場合には,WebサービスのディレクトリであるUDDI(汎用的な記述/発見/統合)レジストリを使い,ストレージ領域を提供してくれるグリッド・サービスや,自社と同じ分析機能を提供しているグリッド・サービスを探し出せる。複数のグリッド・サービスに分析処理を割り当てて並行して処理を進めれば,分析にかかる時間を短縮することも可能になる。各グリッド・サービスのインタフェース仕様は,Webサービスのインタフェース定義に使うWSDL(Webサービス記述言語)で記述しておけばいい。

 Globus Toolkit3.0は,JDK 1.3.1上で稼働する。グローバス・プロジェクトは,2003年4月末にベータ版を公開し,2003年6月末には正式版をリリースする予定だ。2003年中には,C/C++版の実装も提供する計画である。

 グリッド・コンピューティングは,遠隔地にあるコンピュータが持つハードウエアやソフトウエアなどの資源を,必要なときに必要なだけ引き出して利用できるようにするという概念。実現すれば,電力網(パワー・グリッド)から電気を引き出すときと同じように,コンピュータのリソースをネットワーク経由で柔軟に利用可能になる。こうしたグリッド・コンピューティングを現実化するために使われるミドルウエアのうち,事実上の標準と目されているのが,グローバス・プロジェクトが開発する「Globus Toolkit」である。グローバス・プロジェクトは2002年2月,米IBMが提唱したOGSAに賛同し,同社と共同でGlobus Toolkit3.0を開発すると表明していた。(H.J.)