グローバス・プロジェクトは米国時間で7月1日,グリッド・コンピューティング環境を実現するための事実上の標準ミドルウエア「Globus Toolkit3.0」を正式に公開した。3.0では,グリッド・コンピューティング環境の実現にWebサービス技術を利用するという設計アプローチ「OGSA(オープン・グローバス・サービス・アーキテクチャ)」に基づいている点が特徴である。

 3.0は,OGSAの基盤となる「OGSI(オープン・グリッド・サービス基盤)1.0」仕様に準拠した最初のバージョンである。OGSI1.0は,2003年3月に東京で開催された国際会議,GGF(グローバル・グリッド・フォーラム)7で標準化されたもの。グリッド・コンピューティング環境に参加するシステムが必ず実装しているべき基本的なインタフェース仕様を決めている。

 例えば,OGSI1.0では,コンピュータ資源の情報を確認する,サービスを起動する,サービスを破棄するなどの,基本的なインタフェース仕様を定義する。これらのインタフェースを基盤にすれば,負荷の軽いコンピュータを見つけて,実行すべきサービスを送り込んで起動させ,処理が完了したら結果を受け取って破棄する--といった処理を実現可能になる。

 OGSIのインタフェース仕様には,XML(拡張可能マークアップ言語)技術を中核とするWebサービス技術が採用されている。これにより,ミドルウエア,開発言語,OSなどの種類を問わず,柔軟なグリッド・コンピューティング環境を構築できるようになる。従来は,こうしたインタフェースの標準仕様がなく,ミドルウエアが異なると相互に資源情報を交換できないなどの問題があった。

 OGSI1.0に基づいて動作する主要サービスの仕様が本格的に標準化されるのは,まだこれからである。例えば,コンピュータ資源の発見/状況把握/管理のほか,認証やアクセス制御などのセキュリティ,ファイル転送,データ共有などのサービスが必要になってくる。これらの仕様については,標準化され次第,Globus Toolkitに組み込まれていく。現段階では,Globus Toolkit2.4のサービス群をベースにしたものが提供されている。

 ベータ版やアルファ版との違いは多岐にわたる。例えば,米IBMが開発した各種コンポーネントが組み込まれた。Grid Service Generation Tools,Management Service,Logging Service,Java Message Serviceなどである。JavaベースのWebサービス構築用ミドルウエア「Apache Axis1.1」をベースにしている点も新しい。なお,一部のコンポーネントを除き,Windows,UNIX,LinuxのいずれかのJava環境で動作する。

 グリッド・コンピューティングは,遠隔地にあるコンピュータが持つハードウエアやソフトウエアなどの資源を,必要なときに必要なだけ引き出して利用できるようにするという概念。実現すれば,電力網(パワー・グリッド)から電気を引き出すときと同じように,コンピュータのリソースをネットワーク経由で柔軟に利用可能になる。こうしたグリッド・コンピューティングを現実化するために使われるミドルウエアのうち,事実上の標準と目されているのが,グローバス・プロジェクトが開発する「Globus Toolkit」である。(H.J.)