「ブロードバンド時代に向け、高付加価値の製品やサービスを提供する最強タッグを組んだ」(日立製作所の庄山悦彦社長)--。松下電器産業と日立製作所は5月23日、家電製品や情報サービスの共同開発などに関して包括的な提携をしたことを正式に発表した。
両社が発表した提携内容は、ICカード関連技術・サービスの共同開発、ホームネットワーク事業の共同推進、冷蔵庫や洗濯機など白物家電の省エネ・リサイクル技術の共同開発の3点にとどまった。しかし、松下の中村邦夫社長は、「提携は3点だけでなく、今後さらに広めていく」と強調した。両社は、将来の主力製品と期待するインターネットに接続できるデジタルAV家電の共同開発などにも踏み込んでいく見込みだ。
両社はホームネットワーク事業を共同推進するため、年内に新会社を設立する。新会社はまず、電灯線を利用したホームネットワーク技術「ECHONET(エコーネット)」を採用したシステムや、ECHONETを製品に導入するための基盤技術などを共同で開発する。さらに、すべての家電からインターネットに接続できる通信方式「IPv6(Internet Protcol version 6)」を、両社の家電製品に導入するための研究開発を積極的に進める。当初は白物家電のホームネットワーク対応を中心に開発を進めるが、将来はIPv6を使いテレビなどのAV家電をインターネット対応にする基盤技術の共同開発も視野に入れている。
デジタル家電の分野は、現段階ではAV機器を中心にソニーが先行している。松下の中村社長は「ソニーはチャンピオンだ」と強い対抗意識を燃やす。「松下は消費者向け商品の開発に強く、日立は部品やシステムなどインフラ部分のノウハウが豊富」(日立の庄山社長)。両社が相互補完的な提携関係を構築することで、デジタル家電の開発スピードの向上とコスト削減を図り、“王者ソニー”に対抗していく。