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 「人体通信」という耳慣れない通信技術がにわかに脚光を浴びつつある。人体通信とは,人の体をケーブルの代わりに使ってデータ通信を実現する技術のこと。アイデアは1990年代中ごろからあった。最近になって話題に上るようになった理由は,実際に“使えるモノ”が出てきたからだ。

 まず2004年9月に松下電工が世界に先駆けて製品を発売。2005年2月には,NTTが最大10Mビット/秒という高速な伝送速度を実現する新技術「RedTacton」を発表し,試作機を公開した。これで火がついた格好だ。

 人体通信とはどんな技術なのか,その正体を見ていこう。実は,人間の体もLANケーブルも,「どちらも物理的に見れば同じ導体とみなせる」(NTTマイクロシステムインテグレーション研究所の品川満・特別研究員)。程度の差こそあれ,どちらも電気信号を通せるので,データ通信に使えるのだ。

 では,具体的にどうやって電気信号をやりとりするのか。ここは松下電工とNTTでそれぞれ方式が違う。

 松下電工の方式は,「体内を流れる電流の変化」を利用する。人体に送受信機の電極を接触させ,微小電流を流す。この電流を変化させることで0と1を表現する。実際に流れる電流は最大500μA程度。「体脂肪計と同レベルなので,健康への影響はまったくない」(松下電工 製品デバイス事業部商品企画開発グループの嘉正安記課長)という。

 一方,NTTの方式は「人体の表面電界の変化」を利用する。送信機から絶縁体を介して接触している人体に電圧をかけると,かけた電圧に応じて人体の表面電界が変化する。受信機に内蔵した「フォトニック電界センサー」というデバイスでこのごくわずかな変化を増幅し,信号を読み取る。

 人体通信は,人体を伝送媒体として使うことで,通信範囲や相手を明確に限定できるというメリットがある。しかし,このメリットを生かすも殺すも実際の使い道次第。うまく生かせないと特定分野で使われるだけのニッチな技術で終わってしまう可能性がある。

 NTTは,2005年4月から実施予定の共同フィールド実験に向けて,2月中旬から人体通信の使い道に関するアイデアを広く募っている。こうしたアイデアからあっと驚く応用例が出てくるかもしれない。

斉藤 栄太郎