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 「振り込め詐欺」で,110番や119番,家族の電話番号を発信者番号として表示させる偽装行為が増えている。そのため,事業者は急きょ対策を講じた。しかし,完全に防ぐのは難しい。そこで今回は,この発信者番号偽装のしくみを見ていく。

 発信者番号の偽装対策を講じたのは携帯電話事業者各社。実は,携帯電話あての通話の発信者番号は,つい最近まで簡単に偽装できたのである。

 携帯電話事業者は,(1)自網内で発信を受け付けた通話,(2)ほかの事業者からの通話――の両方で発信者番号を表示させる。このうち,(1)の自網内で発信した番号については,端末に割り当てた電話番号を発信者番号として表示させる。偽装の余地はない。

 問題になるのは,(2)のほかの事業者からの通話の場合である。通信事業者間のインタフェースは,着信要求と同時に発信者番号を受け取るようになっている。このとき受け取った発信者番号は,チェックしないのが原則だ。

 発信者番号の偽装は,ここを突いて任意の番号を携帯電話に表示させていた。海外には,任意の発信者番号を指定できる発信者番号指定サービスが存在する。これは電話中継サービスの一種で,ここに電話して,相手に通知する発信者番号と通話先の番号をプッシュボタンで指定すれば,任意の番号を相手に伝えたうえで相手と通話できる。

 発信者番号指定サービスがつながる海外の通信事業者は,発信者が送る発信者番号をチェックしない。そのため,「110」などの番号を指定して,日本国内の携帯電話に電話をかければ,そのまま相手の端末に「110」を表示できた。発信者番号指定サービスの料金は,日本国内の固定電話から携帯電話に発信する場合で,1分50円程度である。

 問題を認識した携帯電話事業者は,3月に入って相次ぎ,海外からの発信者番号のチェックを厳しくした。この対策により,従来の手口での発信者番号の偽装はできなくなった。

 ただし,これで発信者番号偽装の危険性が一掃されたわけではない。例えば,IP電話サービスのしくみを考えると,これからチェックの甘い発信者番号指定サービスが国内で提供される可能性はある。しかも現状では,国内事業者からの発信者番号は互いに信じるのが原則なのだ。

 実際のところ,国内の他事業者からの発信者番号をチェックするのは難しい。発信者番号と発信してきた事業者の対応を検証しようとしても,実際には対応が崩れている。同じ電話番号で事業者間を乗り換えたり,コールバック先を連絡するために実際とは違う番号を通知することがあるからだ。

 海外からの発信者番号の偽装が,携帯電話へだけでなく固定電話への着信で起こる可能性もある。NTT東日本の場合,国際通話の着信のうち,ISDNなどのデジタル回線から発信されたときは,そのまま発信者番号を着信端末に表示させる。被害がなかったのは,「海外の発信者番号指定サービスがアナログ回線を利用していたから」(NTT東日本)。デジタル回線を利用した発信者番号通知サービスが登場すれば,被害は避けられない状態だ。

 ユーザーは,表示された電話番号をそのまま信じるのではなく,必要に応じて相手にかけ直すといった自衛策を講じたほうがよさそうだ。

阿蘇 和人