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 USB(universal serial bus)が無線だったらもっと便利に使えるのに――。そう感じたことのあるユーザーは多くいそうだ。その願いが現実に一歩近づいた。業界団体のWireless USBプロモータ・グループが5月24日,USB2.0を無線化するWireless USB(WUSB)の仕様を公開したのである。最初の製品は,2006年の春から夏にかけて登場する見込みだ。

 WUSBを一言でいうと,USB2.0のケーブルを無線に置き換える規格である。今までケーブルを使ってつないでいたデジタルカメラやハードディスクをケーブルなしでつなげられる。

 WUSBはUSBと同じく,パソコンのようなホストを中心に,周辺機器と1対1または1対多で接続できる。転送速度は,3メートルの距離ならUSB2.0と同じ480Mビット/秒。10メートルなら110Mビット/秒になる。ほかの無線通信規格であるBluetooth(1Mビット/秒)や無線LAN(最高54Mビット/秒)に比べ圧倒的に速い。

 高速化の秘密は,マルチバンドOFDM(orthogonal frequency division multiplex)という伝送方式にある。この方式は,転送するデータを広い周波数帯域にまんべんなく拡散して送ることで速い伝送速度を実現する。さらに,WUSBで確実に通信するのに必要な電波は,ほかの方式の無線機器からは,通信に支障がないレベルのノイズにしか見えない。同じ周波数帯を使うほかの無線機器のじゃまをせず,しかもWUSB同士は高速にデータを転送できる。

 WUSBは,USB2.0を単純に無線化しただけではない。いくつかの機能を付け加えている。そのうち代表的なものは,(1)混信の防止機能と(2)認証機能の二つである。

 混信の防止機能は,電波が届く範囲内でほかのグループが通信しているケースを想定したもの。異なるグループと混信しないように,WUSBで使う周波数帯を三つに分けて別々のチャネルで通信させる。同じ場所で同時に通信するグループがそれより多く,三つのチャネルでも足りないときは,同一チャネルをグループごとに時分割する。また,やりとりするデータは暗号化する。

 認証機能は,「アソシエーション」という手順で実現する。USBであれば,ケーブルでつないだ相手と接続すればいい。しかしWUSBではそうはいかない。無線が届く範囲にいる相手と無条件に接続すると,意図しない機器とつながってしまうかもしれない。こうした事態を避けるための手順がアソシエーションである。

 実は,このアソシエーションの手順はまだ完全には決まっていない。今のところ決まっているのは,事前に有線ケーブルを使う手順だけ。WUSBでやりとりする前に,USBケーブルで機器同士を接続して相手を認識させる。こうして認識した相手とだけ,ケーブルを外してWUSBで通信できるようになる。2006年前半に登場予定のWUSB対応製品は,有線のUSBインタフェースも備えて,それを使って相手を認識してから無線通信を始めることになる。

 WUSBの今後の課題は,無線だけでアソシエーションができるようにすること。相手から無線で受け取ったアソシエーション情報を人間が液晶パネルで確認するなど,いくつかの方式が検討されている。無線で簡単にできるアソシエーション方法が決まれば,パソコンと周辺機器をつなぐのにケーブルが要らなくなるはずだ。

阿蘇 和人