PR

日本コンピュータセキュリティリサーチのの遠藤氏

 無線LANなどのワイヤレス・ネットワーク技術を使って,自分の部屋からほかの部屋にあるエアコンの温度を調整したり,テレビ番組の録画を予約する――。無線LANの普及状況を見ていると,家庭でこうした処理が気軽にできる日は意外と近いかもしれない。だが,専門家に言わせるとそんな環境は快適どころか一歩間違えると「危なくてしようがない家」になってしまうかもしれないという。無線LANを積極的に悪用する新しいウイルスの出現によって,家庭のネットワークが大きな脅威にさらされる危険があるからだ。

 警鐘を鳴らすのは,日本コンピュータセキュリティリサーチ(JCSR)の遠藤基・コンピューターウイルス研究員
。同氏によれば,無線LANは技術や製品が登場してからまだ日が浅いにもかかわらえず,これほど急速に普及してしまったため,「今後さまざまなセキュリティ上の脅威を生みだす危険がある」(同氏)という。

 具体例として遠藤氏はまず,無線LANについての知識を持たない初心者ユーザーによる「管理されない無線LAN機器」の急増を挙げた。例えばノート型パソコンは,2003年時点では約4割程度が無線LAN機能を標準装備している。これが今後5年以内にほぼ100パーセントになるという。その結果,「ユーザーが無線LANについてよく知らないために,セキュリティ情報を何も設定せずに稼働させてしまう機器が多数出てくるだろう」(同氏)。

 遠藤氏は,すでにそうした状況は局所的に起こっていると指摘する。一例として,ユーザーが無線LANのアクセス・ポイント機能を搭載したプリンタを大量導入した結果,無防備なアクセス・ポイントが30個も作られてしまい,しばらく放置されたままだったという事例を紹介した。

 こうした野放し状態の無線LAN機器が増え続けるといったい何が起こるのか。同氏は,通信内容の漏えいなどの被害に加え,無線LANを感染や発病後の悪さをする手段として利用するウイルスが出現してくると予測した。「例えば自分のアクセス・ポイントに勝手に外からアクセスされて,ウイルスが侵入してくる。あるいは逆に自分が勝手にどこかのアクセス・ポイントに接続させられてウイルスに感染する可能性がある」(同氏)。

 今のところ無線LANだけを利用して感染を広げるようなウイルスやワームはまだ出てきていない。だが,携帯電話分野では,すでにBluetoothを介して増殖するワームが今年出現している。「まずは感染経路としてメールと無線LANの両方を使うウイルスが先に出てくるのではないか。その次の段階として,無線LANだけを利用して染感を広げるウイルスが出現するだろう」(遠藤氏)。

 こうした無線LANウイルスによって,「例えば先に無線LANウイルスを使って,エアコンが動いていないかを報告させる。そして,空き家であることを確認したのち物理的に侵入する。あるいは,ネットワーク・カメラを外からコントロールして家の中を下調べする。そんな『21世紀型のIT泥棒』が登場することさえ絵空事とはいえなくなりつつある」。

(斉藤 栄太郎=日経NETWORK)