マイクロソフトの次世代PC構想として注目を集めてきた“タブレットPC”が2002年11月7日に発売となった。日本国内ではソーテック,東芝,NEC,日本ヒューレット・パッカード(日本HP),富士通,日本エイサー,ビューソニックジャパン,ベースブレードジャパンと,同日参入を明らかにした松下電器産業の計9社がタブレットPCを出荷する予定である。製品の価格帯は20万円台前半から30万円前後。

 また,現時点でナムコやオートデスク,クレオなど33社の国内ソフトウエア・ベンダーがタブレットPC対応のソフトウエア製品の開発・発売を計画している。33社という数字は米国よりも多く世界最多。このほか,ソニーについても,「タブレットPCのコンセプトについては賛同してはもらった」(マイクロソフトの阿多親市社長)というが,具体的な開発計画は現時点では明らかになっていない。

 タブレットPCはWindows XP Professionalの拡張である「Windows XP Tablet PC Edition」をプリインストールする。ペンを使った手書き文字認識や,手で書いた文字をそのままの形で扱える“デジタルインク”,これらの機能を活用するためのアプリケーション「Windows Journal」の搭載などが特徴である。

ソフト集「PowerToys」を無償提供
 昨年のコンセプト発表以来,タブレットPCの一般ユーザーへの普及については否定的な意見もかなり多い。しかし,マイクロソフトは「1992年のWindows for Pen Computing以来10年の研究開発を経て,機は熟した。特定用途向けに特化した製品ではない」(阿多社長)と自信を見せる。また,「パソコンの先進ユーザーはウンチクが多い。WPC EXPOに出展して分かったが,シニアの方々や本当の初心者ユーザーの方がペンで書くということについてとっつきが良かった」(マイクロソフト関係者)。同社では1年目の販売目標を25万台としているが,「これはかなり控えめな数字」(同)とする。

 マイクロソフトではOffice XPにデジタルインクなどの機能を追加するソフト「Microsoft Office XP Pack for Tablet PC」を7日から,ソフト集「PowerToys」を8日から同社Webサイトで無償ダウンロード提供する。PowerToysにはビリヤードのゲーム「Tablet Pool」や楽譜作成ソフト「Music Notepad」,デジタルインクで書かれた文書をサムネイル表示できるソフト「Journal Note Thumbnails」,Webページの一部などをペンで囲むことで抜き出せるソフト「Snippet」が含まれる。

NECは15mmの薄さ,1kg以下の重さを目指す
 都内ホテルで開催されたタブレットPCの発表会ではマイクロソフトとソーテック,東芝,NEC,日本HP,富士通が出席し,各社の製品を披露した。タブレットPCはキーボードが付属する“コンバーチブル型”とキーボードを持たず,完全に板状の形の“ピュアタブレット型”に分かれる。ソーテックと東芝はコンバーチブル型,NECと富士通はピュアタブレット型,日本HPは両方の形がとれる製品を展示した。このうち,NECのタブレットPCはまだ試作機の段階であったが今回展示された中では最も小型・軽量で,薄さ15mmで重さ1kg以下の製品を目指すとする。発売時期は2003年の1月~3月。

 また,東芝,NEC,富士通,日本エイサーなどのハードウエア・ベンダー各社へ電磁誘導式デジタイザ(タブレットの部分)を供給するワコムは米国の筆記具メーカーA.T.クロスと共同で,タブレットPC用の高級電子ペンを開発したと発表した。デザインはA.T.クロスが担当し,高級感のあるメタリック調。2003年春に発売を予定する。価格は未定。阿多社長も「タブレットPCによってペンへのこだわりというものも出てくるだろう」と語った。

 発表会では,かつて東芝で日本語ワープロを発明したことで知られる森健一・東芝テック社長がビデオで登場し,「私はワープロで書いた文章も,署名のところだけは肉筆で書いていた。ただ,電子メールでは今まで肉筆のサインができなかった。タブレットPCでこれが可能になるのはたいへん面白い」とコメントした。

(武部 健一=BizTech編集)