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 XP(エクストリーム・プログラミング)に代表されるアジャイル(agile=俊敏な,機動的な)開発プロセスへの注目が高まっている。7月,企業/団体向けの普及団体「アジャイルプロセス協議会」と,ソフトウエア開発者個人向けのユーザー会「日本XPユーザグループ」のイベントが相次いで行われた。

早さだけではなくスローな視点を
 アジャイルプロセス協議会は7月9日,東京で設立記念セミナーを開催した。同協議会は,日本のITビジネスにおけるアジャイルなソフトウエア開発の啓もうと普及を目的に今年2月に発足した企業/団体向け組織。7月9日時点で,国内20数社が加盟している。同セミナーには加盟企業のメンバーを含め全国から120名が参加し,アジャイル・プロセスの有識者による講演に耳を傾けた。

 最初の講演では,協議会会長を務める豆蔵の羽生田栄一会長が,デザインパターンの原型となった建築分野におけるパターン・ランゲージの概念を例にとって,現在のアジャイル・プロセスの問題点と今後の課題を説明。現在のアジャイル・プロセスについて「不定形,複雑,不整合,変化する要求を甘く見ている」と指摘し,XP(エクストリーム・プログラミング)が提唱する「オンサイト顧客」「計画ゲーム」「メタファ」などのプラクティスだけでは,顧客(ユーザー)にとって真に価値あるソフトウエアを作るのは難しいと批判した。

 同氏は,今後,変化する要求を正確に把握するには,顧客/開発者が一同に会して議論し合う場(ワークショップ)と,そのための共通言語(パターン・ランゲージ)の概念が重要になると説明。ユーザー,管理者,経営者,設計者,プログラマといった様々な利害関係者(ステークホルダー)の意見を調整するリーダー(ファシリテータ)を育成することが,ソフトウエア開発において不可欠として,単なる「要求定義」から,利害関係者を含む「要求=合意形成プロセス」を確立することが重要になると述べた。

 また,消費者が安心して食べられる本物の食物(スローフード)と,早さと安さを売りにするファストフードを比較。「アジャイルを,早さ(fast)という視点だけで考えると,良いものを作るという視点が抜け落ちる」として「真に顧客のためのソフトウエアを作るには,顧客の要求をじっくり獲得する,スロー(slow)な視点が大切」と主張した。

 このほか同セミナーでは,ユーザーとの契約の仕方を検討する「見積/契約ガイドライン作成WG(ワーキング・グループ)」,開発チームのメンバーを精神/教育面からサポートする「アジャイル・メンタリング&コーチングWG」,日本におけるアジャイル・プロセスの導入事例を収集して分析する「リファレンス・モデル作成WG」,アジャイル・プロセスのマネジメント方法を検討する「アジャイル・プロジェクト・マネジメントWG」の四つのワーキング・グループの概要と今後の活動方針について説明があった。

XPは開発者をヤル気にさせる
 一方,XPの普及と啓もうを行うソフトウエア開発者個人向けの団体日本XPユーザグループ(XPJUG)は7月18日,東京・代々木の国立オリンピック記念青少年総合センターで,イベント「XP祭り 2003」を開催。百数十名以上の参加者を集め,XP(エクストリーム・プログラミング)に対する関心が,現場の開発者の間で依然として高いことをうかがわせた。

 XP祭りは,まる1日かけてXPについての議論や最新情報の発表を行うイベント。今年で2回目になる。同グループは5月現在,登録者数1000名を突破。XP祭りでは,テスト・ファーストの実践方法,SmalltalkとXPとの関係,国内におけるXP導入事例の紹介,4月にオブジェクト倶楽部が実施したXP普及セミナー「XPアンギャ」(関連記事はこちら,閲覧にはITProへの登録が必要)の報告,伊Genovaで行われた「XP2003」/米Salt Lake Cityで行われた「Agile Development Conference」の二つの国際シンポジウムについての報告など,昨年以上の盛りだくさんの講演を実施した。

 特に盛り上がったのが,NECの牛尾 剛氏によるヤンマー農機に対するXPプロジェクト導入事例の紹介。奇抜な衣装と芝居風のプレゼンテーションで,楽しくかつわかりやすい発表を行い,場内の拍手喝采をさらった。また,複数の発表者が短時間に次々とプレゼンテーションを行うライトニング・トークスのコーナーでは,当日飛び込み参加の発表者が出るなど,主催者/参加者双方でXPを楽しく盛り上げていこうという意気込みが感じられた。

 二つのイベントに共通しているのは,XP/アジャイルは,もはや研究の段階ではない,という視点である。しかし実際に導入するには,契約などさまざまな課題がある。そこで「これからはアジャイル・プロセスの導入を考えているユーザーとの対話が必要だ」(エクイティ・リサーチの大槻繁氏)などの声も多い。今後,XP/アジャイル・プロセスのムーブメントが本格的に普及するかどうかは,開発者/プログラマによるコミュニティ活動が,ユーザーを巻き込んでどこまで拡大するかにかかっている。

(日経ソフトウエア)