「パソコンから情報家電へ」─これを現実化させるためには,テレビや電話,セットトップ・ボックスといった家庭内の電子機器をネットワーク化するための規格が不可欠である。いまこの規格を巡って主導権争いが激化している。

 先陣を切ったのは,ソニー松下電器産業松下電器産業など8社が提唱した「HAVi(Home Audio/Video interoperability)」。これに続いて,99年1月には米Sun Microsystemsが「Jini」を,米Microsoftが「Universal Plug and Play(UPnP)」を相次ぎ発表。蘭Royal Philips Electronics,ソニー,米Sun Microsystemsの3社がHAViとJiniの相互接続で協力するという発表もあった。

 3規格の違いを簡単にまとめるとのようになる。HAViは通信インフラとしてIEEE1394を,ソフトウエアのプラットホームとしてJavaを選択した。ただHAViデバイスにはIAV(Intermediate AV devices)とFAV(Full AV devices)があり,Javaの実行環境を備えるのはFAVだけである。仕様が詳細に決まっている,対象とする製品を主にAV系に絞り込んでいる,という点では,3規格の中ではもっとも現実性があると言えるだろう。

 これに対し,Jiniはやや大風呂敷との印象がぬぐえない。対象機器もプリンタ,記憶装置,携帯型情報機器,デジタル・カメラ,携帯電話,家庭用の通信機器(ゲートウェイ),ビデオ,テレビ,セットトップ・ボックス,DVDプレーヤ,産業用制御機器と何でもあり。Javaを使う点だけははっきりしているが,すべての機器にJavaを組み込むことを機器メーカーが納得するかどうか,やや疑問が残る。

 一方,MicrosoftのUPnPは,Windows 95で打ち出した"Plug and Play"というコンセプトを,パソコン中心ではない形に衣がえしようというものだ。すべての機器にIP(Internet Protocol)を装備させることや,家庭の中と外を結ぶルーターを重視している点がユニーク。家庭に大容量のデジタル回線がやってきた場合,テレビも電話もパソコンもそこから情報を得るようになる可能性がある。今でも複数のパソコンとルーターを使っている人はけっこういる。そう考えると,家庭内ネットワークの中心にルーターを据えるという考え方は現実的だ。

 ただし,UPnPの詳細な仕様はまだ決まっていない。4月7日から開催するWinHEC 99(Windows Hardware Engineering Conference)でUPnP仕様の詳細とサンプル・コードを配布し,デモを実施。99年後半には,Windows 98/2000/CE向け開発キットのベータ版をリリースするという。

 HAVi,Jini,UPnPのいずれが主流になるにせよ,製品が登場するのは1999年末から2000年以降である。直接デバイス内のソフトウエアを開発する人はそれほど多くないだろうが,これらの仕様が普及するころには,パソコンから各種機器を制御するプログラムを簡単に書けるようになるかもしれない。今後の展開に注目して損はない。