米Microsoftは9月17日,論争を巻き起こしたPassport .NET認証サービスを,AOL(America Online)などのライバル企業のサービスと互換性を持たせられるようにオープン化すると発表した。おおむね,プライバシー保護団体や法律家,競合会社からの批判に対応している。MicrosoftはPassportサービスを来月出荷するWindows XPに統合している。それはユーザーがパソコンの電源を入れたときに,自動的にPassportサービスにログオンさせるようにするだろう。
プライバシー保護団体は,Microsoftがユーザー情報の交換所になろうとしていると攻撃した。Passportサービスで管理する情報には,名前や住所,クレジット・カード情報,購買データなどの個人情報が含まれているからだ。この団体は,情報を独占したMicrosoftが,ユーザーの知らぬ間に購買傾向やその他の情報を他の企業に販売するのではないかと危惧している。Microsoftはこうした憶測を否定してきた。「われわれはインターネットの中で唯一の認証機関になりたいわけではない」とRobert Muglia副社長は語る。「われわれは認証サービスを提供するプロバイダの1つに過ぎないと思っている」。
Passportをオープン化するために,Microsoftは業界標準のKerberos 5.0セキュリティ・プロトコルを組み込んだ。これで,かつてATM(現金自動預け払い機)が異なる銀行間で接続されていなかったような非互換性の問題を避けられる。Microsoftはインターネット取引に弾みをつけさせようとしている。
ユーザーが抱くイメージを和らげるために,MicrosoftはHailStorm(「ひょうを伴う嵐」の意)サービスの名称を「.NET My Services」に変えることにした。HailStormはMicrosoft自身が提供する.NET関連サービスの開発コード名である。
しかし,.NET My Servicesや新しいPassportサービスがユーザーの関心をとらえたとしても,Microsoftは米国の経済情勢が悪化する前にユーザーにサービスを購入させることはできなかった。いまやMicrosoftは,この計画が頓挫しないように全力をあげて取り組まなければならない。