マイクロソフトは8月27日,都内で「Microsoft SAP Customer Workshop」を開催した。Microsoftが独SAPのERP(Enterprise Resource Planning)パッケージであるSAP R/3を使って世界規模で展開・運用している基幹業務システムの事例紹介セミナーである。当日は300人以上の来場者を集め,基幹業務をWindowsプラットフォームで構築するノウハウなどが講演された。弊誌は,講師として来日した米Microsoft情報システム部門のナンバー2であるTodd Baumeisterディレクタにインタビューした。他にもSAP担当テクニカル・アドバイザのMarco Manuello氏とグローバル・セールス・マネージャのClaus Jul Christiansen氏が同席した。

 「必ずしも直接的な営業が目的ではありません。Microsoft製品の顧客から,基幹業務システムに関してよく質問を受けるので,それにまとめてこたえる形で3カ月に一度セミナーをやることにしたのです。6年前にスタートして今回で24回目。日本では初めてになります」と語る。ワークショップの目的は,大規模な基幹業務システムをWindowsプラットフォームとバックヤードで稼働するSQL Serverで実現できることを「ショウケース」としてアピールすることだ。

 同社では,財務・経理管理,従業員・組織管理,オーダー管理などの基幹業務システムを,Windows OSとSQL Server,そしてSAP R/3で構築して世界規模で運用している。本社のあるレドモンドには,SQL Server 2000が稼働するデータベース・サーバー1台と,SAP R/3 4.5bが稼働するアプリケーション・サーバー11台がある。サーバーOSはWindows .NET Server(ベータ3)を使う。データベースのサイズは875Gバイトで,1週間に6Gバイトの割合で増大している。ユーザー数は全部で5万人超,600人以上が常時利用している。「このシステム規模は,SAPのユーザー企業の中では上位10%に入り,かなり大規模です。MicrosoftのSAPシステムの最大の特徴は,全世界の基幹業務を1カ所に集中して処理していることでしょう。IntelやCoca- Colaなどのグローバル企業もSAP R/3を使っていますが,彼らは各国で別々にシステムを運用していて,弊社のように1カ所に統合されているのは珍しいのではないでしょうか」。1カ所に集中することのメリットは,OSやデータベース,SAP R/3などの内部のモジュールを統一する手間が省けることである。このような基幹業務システムによる経費削減は,年間1億2500万ドルを超えるという。

 「稼働率は99.9~99.99%あります。ダウンタイムを引き起こす最大の要因は,Microsoftのベータ製品を使っているためです」。Microsoftの情報システム部門は,「ドッグ・フードを食べる」(ベータ版を使うという意味)作業も業務の一環だ。彼らは,Microsoft製品の最初のユーザーであり,開発部門にも大きな発言権がある。自分たちで使ってこそ顧客に売ることができるというわけである。SAPシステムの運用する上で,稼働率を上げる工夫については,「特にSAP R/3の管理には,かなりきめ細かい配慮をしなければなりません。ビジネスの流れが変更されたり,他のシステムの統合をするときは,慎重にやることです」という。そのために四半期に一度は,修正モジュールを当てたり,ハードウエアの交換・拡張を行うなど,メンテナンスを実施している。「ある大企業のIT部門から相談を受けたのですが,実際の運用の様子は行き当たりばったりになっていて,修正モジュールも当てずに,不必要なコードを書いてしのいでいるといった具合でした。長期的な計画を立てて,リスク・アセスメントをしてメンテナンスに臨めば,稼働率はアップします」と語る。

 今後の予定として,.NETプラットフォームへの対応と64ビットのItaniumプロセッサへの対応を聞いた。「どこの企業でもそうだと思いますが,新しい技術を導入するには,ビジネスとしての正当性が必要になります」と控えめな表現をした。同社の優先順位は,.NET化の後に64ビット化があるという。「現在,SAP用のWebアプリケーション・サーバーを構築できる.NET Connectorをテスト中で,XML(Extensible Markup Language)とSOAP(Simple Object Access Protocol)でメッセージをやり取りすることができます。ただ,COM(Component Object Model)コネクタはまだ存在するし,ゆっくり導入を進めているところです。本格稼働は2003年以降です」。64ビット化に関しては,「まだ計画段階です。とりあえずライブ・キャッシュ・サーバーという,大容量のメモリーが必要とされる周辺のところに導入しようと思います。コアの部分は,まだ32ビットのプラットフォームで十分な性能を確保できているので,64ビット化はまだ先ですね。ただ,将来的には64ビット化に向かっているのは確実で,SAPシステムは32ビットから64ビットへ途切れることなく移行できます」。

(木下 篤芳=日経Windowsプロ)