米Apple Computerと米Microsoftがそれぞれ,会社をうまく利用しようとした従業員に対して法的な制裁を加えた。Appleでは元契約社員がPowerMac新製品のデザインを会社から盗んで,製品発表前にWebサイトに掲載していた。Microsoftでは従業員が,会社の資金で購入した900万ドルものMS製ソフトウエアを,横流ししていた。

 Appleは12月12日,米カリフォルニア州で元契約社員のJose Lopesを,企業機密漏えいと職務規程違反で訴えた。訴状によればLopesは昨年の夏,Appleが準備していた新型のPowerMac G4のデザインを盗み出し,製品リリース前にWebサイトに掲載していた。これらのデザインには,図面や写真,技術的な詳細が含まれている。

 Appleは訴状で,「イノベーションはAppleの“DNA”に組み込まれているものだ。当社の成功の上で企業機密の保護は欠かせない。訴訟という手段に出たのは,当社の知的財産権にかかわる守秘義務を保護するのに,それが不可欠だからだ」と主張している。この訴訟は,Appleの企業機密を巡る重大な事件として,2度目となるものだ。2000年にもAppleは,元契約社員のJuan Gutierrezを,当時登場間近であったiBookを含む新製品の詳細を暴露したとして訴えている。Gutierrez(ネット上での名前は「worker bee(働きバチ)」)との訴訟は後に解決した。

 Appleは他の企業よりも企業機密の保護に熱心だ。というのも同社は,MacWorld Expoで行われるSteve Jobsの基調講演でファンに対する“ドッキリ”として新製品を発表したり,秘密の新製品を突然プレスに対して発表するといったことが好きだからだ。同社の業績は,息を殺して新製品をじっと待つようなファンの反応に多くを左右される。だからこそ,ファンの熱狂をそがないように,新製品に関する詳細は厳重に隠さなくてはならない。

 一方でMicrosoftは11日,32歳のソフトウエア開発者であるDaniel Feussnerを解雇した。彼はここ数年間にわたって,Microsoftの資金を使って合計900万ドル以上のMS製ソフトウエアを調達し,それに安値を付けて路上で売り払っていた。11日に逮捕されたFeussnerはこの詐取で稼いだ金で,高級車や宝石,ヨットを購入していた。彼は通信詐欺やメール詐欺,コンピュータ詐欺など合計5つの罪で訴えられており,それらはそれぞれ懲役5年に値する。

 Feussnerに対する訴状によれば,この元Microsoft従業員は,部下や他の従業員に対して,1700個以上のMS製高額製品を調達するように命令していた。その製品とは,Windows 2000 ServerやSQL Server 2000 Enterprise Edition,Visual Studio .NETなどで,訴状によればそれぞれ1800ドルから2万ドルになる製品だという。これらの調達は2001年12月3日から2002年11月25日まで行われていた。6月には連邦捜査官が,MS本社に近いワシントン州Bellevueの駐車場で,盗んだ製品を現金に交換するFeussnerを目撃している。FBIによれば,Feussnerの銀行預金は2002年2月25日以前の平均が2158ドルだったのに対して,2月25日以降は12万9775ドルになっていたという。

 Feussnerは不法に得た収入を使って,上流生活をほしいままにしていた。2002年だけでも,9万5000ドルのフェラーリと,3万6000ドルのジャガー,ハンマーH1(General Motors社の大型オフロード車),メルセデス500SEL,2万1000ドルのハーレー・ダビッドソン,8000ドルのダイヤモンドの指輪,2230ドルのロレックスの腕時計と4000ドルのブレスレットを購入している。8月には,6万5000ドルでヨットを購入した。残りの12万ドルは借りた金だった。彼は自分のWebサイトでこれらを自慢していた。Webサイトでは「ザ・ジュード(The Dude)」と名乗っていた。Dudeは,コーエン兄弟の映画「ビッグ・リボウスキ(The Big Lebowski)」の登場人物だ。

 Microsoftはこの事件に関して,司法当局に対して述べた以上のことを語っていない。同社の広報は「われわれは,従業員による窃盗を重く受け止めており,顧客や関係者に対して影響があったことを認識している。われわれは,窃盗を監視するための社内基準をいくつも設定しており,また司法当局とは密接に協議している」と述べている。腰までかかる長さのドレッド・ヘアーをしたFeussnerは,MicrosoftでMSNサーチ・エンジンを担当していた。