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 「日本企業の多くは,IT投資に見合う効果を得られていない」---2003年4月25日に開催された日経システム構築誕生記念セミナーの基調講演で,アクセンチュア 代表取締役社長 村山徹氏はこのように指摘した。投資対効果を得るためには「目先のコスト削減のためのIT投資にとらわれるのではなく,売り上げ拡大を目的としたIT投資を,事業戦略とリンクして実施していく必要がある」と訴えた。また,同日開催されたパネルディスカッションでは「オープンソースのメリットを生かすためにはエンジニアの力が最も重要になる」などの指摘がなされた。

アクセンチュア
代表取締役社長
村山徹氏
 アクセンチュアの村山氏は「情報システム 今後10年の課題と展望」と題した講演の中で,日本企業のIT投資対効果(ROI)は欧米と比較してもかなり小さいと指摘,「明確な効果が分からないため,年々,IT投資が抑制され,その結果として,さらにIT投資の効果が得られなくなるという悪循環を避けなければならない」と語った。

 そのため,日本のIT投資の課題として,コスト削減を目的とした投資から,売り上げ拡大を目的とした投資へシフトさせる必要があると訴えた。その実例としてR&D(研究開発)によるコラボレーションの進展,SCM(サプライ・チェーン・マネジメント)によるマーケットへのダイレクトリンクの推進,CRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)によるソリューション営業へのシフトを挙げた。ただし,このような売り上げ拡大の取り組みを行うと,新たな手間も必要になる。そのため「事業戦略および事業計画と密接にリンクしたIT投資である必要があり,同時に人的資源配分ポートフォリオとのリンクも欠かせない」と指摘した。

 また,同日開催されたパネルディスカッション「オープンソースで変わる企業システム」では,オープンソース・ソフトウエアによるシステム構築の魅力と課題が議論された。インテグレータのニスコム IAソリューション事業部 事業部長 染谷邦裕氏,日本Linux協会の前会長であるネットワーク応用通信研究所 取締役 生越昌己氏,ユーザー企業であるニユートーキヨー 財務部 情報システム室 室長 湯澤一比古氏,の3名が各自の立場から意見を述べた。

左からニスコム 染谷邦裕氏
ネットワーク応用通信研究所 生越昌己氏
ニユートーキヨー 湯澤一比古氏
 オープンソースを採用するだけでなく,自社の受発注システム「セルベッサ」自体をオープンソースとして公開しているニユートーキヨーの湯澤氏は,オープンソースによって,システムの品質が向上すると指摘した。「自社だけでシステムのあらゆる問題に対処し,メンテナンスすることは難しい。オープンソース・ソフトウエアとして公開して,みんなで使ってもらえれば,問題もみんなで直していくことができる。自社のシステムがより良いものになると」と,公開した理由を語った。

 ニスコムの染谷氏は,無保証なオープンソースによるシステムを保証することがインテグレータのビジネスになると指摘した。「我々は,オープンソース・ソフトウエアでシステムを構築し,顧客に稼働を保証してきた。商用ソフトで問題に直面すると,『ソフトの仕様です』と言って逃げることができるが,オープンソースではできない。無保証なものを保証するリスクはあるが,そのリスクを引き受けることこそがビジネスになる」(染谷氏)。

 ネットワーク応用通信研究所の生越氏は「政府や自治体のシステムは公開性,説明責任が重視されており,その観点からオープンソース・ソフトウエアが求められている」と指摘。同時に「オープンソースは,今まであいまいだったものをすべてオープンにする。責任の所在や,技術力などが明らかになる。今まで他者任せで,責任転嫁してきたインテグレータは生き残れなくなる」と語った。

 オープンソース・ソフトウエアによるシステム構築では,“人”の重要性が飛躍的に高まると,パネリストが一致して指摘した。「同じ楽譜でも演奏者によって変わるように,オープンソース・ソフトウエアを使ったシステムはエンジニアによってシステムの質が大きく変わる。本質を理解しなければ構築できない。楽な道ではないが,乗り越えればいつまでも通用するエンジニアになれる」(染谷氏)と,聴衆に向けてメッセージが投げられた。

(岡本 藍=日経システム構築)