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 神戸製鋼所は2005年1月,東京本社および同社最大の加古川工場を対象として,IPセントレックスを導入した。既に内線電話網はVoIPゲートウエイを使ってIP化していたが,今回は既存PBXの撤廃,050番号の導入,IP電話機へのリプレースなど,電話システムのIP化をさらに推し進めた格好だ。東京・池袋のサンシャインシティ文化会館で開催中の「IPテレフォニー&ケータイソリューション2005」では,同社で電話システムのIP化を推進した経営企画部 IT企画室 室長の林高弘氏が,移行の目的や経緯,今後の展開などについて講演した。

 神戸製鋼所は2003年に,各拠点のPBXにVoIPゲートウエイを接続し,拠点間の内線電話をH.323によりIP-VPNで利用するシステムを導入済み。しかし,「既存PBXが老朽化し,保守費用や交換部品の調達に支障が出ていたほか,通信料金の部門への振り替え,レイアウト変更に伴う配線費用が膨らんでいた」(林氏)。そこで,2004年の年末にシステムを移行し,2005年初頭に稼動させる予定で,実質的な本社である東京本社および同社最大の工場である加古川工場で,自営IPセントレックスの導入を決定した。

 同社が導入したシステムの特徴は,(1)IPセントレックスによるPBXの撤廃と交換機機能の集約,(2)IP電話回線の導入,(3)既存のH.323内線網との相互接続,(4)WAN内での音声パケットの圧縮,などである。

 (1)のIPセントレックスに関しては,沖電気工業のSIPサーバー「IP Convergence Server SS9100」を神戸の同社データセンターに配置し,東京本社には多機能IP電話機(約2000台),加古川工場にはIP電話回線に対応したPHSシステム(端末数は約2300台)を導入した。(2)のIP電話回線の導入により,基本的に東京本社からの発信はIP電話回線を使うようにした。着信用と発信者番号に050番号を使いたくないケースに備えて固定電話回線は残しているが,回線数を半減させることで大幅に固定費を圧縮した。この場合,WANに障害が発生すると,東京本社では電話が使えなくなってしまうため,「最低限,外線の発着信を確保するためにサバイバルBOXと名づけたサーバーを設置した」(林氏)という。

 他拠点はH.323により拠点間の内線網をVoIP化しているため,データセンター内にSIP-H.323コンバータを置き,SIP網とH.323網を接続する。また,IP電話回線の1チャネル当たりの通信速度は約100kビット/秒のため,「WANのトラフィックを圧迫し,通話料金は削減できても,WAN回線の通信料金が上がってしまうことが懸念された」(林氏)。このため,WANに流れる音声パケットはG.729aにより8kビット/秒に圧縮し1チャネル当たり約20kビット/秒程度の占有にとどめるといった工夫もした。これ以外にも,IP-VPNの障害に備え,インターネットVPNでデータセンターに接続するバックアップ網を用意するといった対策も講じている。

 導入当初は「特定の番号あてのファクシミリが送れなかったり,アナログ回線にノイズが乗るといったトラブルはあったが,レベル調整やアースの取り直しなどにより数日の間に手を打てた」(林氏)という。導入効果としては東京本社単体で年間約1億円のコストを削減できたとしており,全社展開後は年間2億円まで削減効果を拡大できると見積もっている。

 IPセントレックスへの移行に加え,利便性を高めるための機能拡張を予定している。具体的には,FOMA端末への対応,パソコン用ソフトフォンの導入,メールやWEBアプリケーションとの連携による電話のダイヤル操作の自動化やお客様情報の表示などである。

 林氏は「2008年度中には全社的にIPセントレックスに移行し,質量ともに国内最大級のIP電話システムを構築したい」と締めくくった。

(仙石 誠=日経システム構築)


5月19日~20日、サンシャインシティ文化会館(東京・池袋)で開催(日経BP社主催)。
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