ソフト・ベンダーのライセンス戦略に変化が起こっている。これまでソフト・ベンダーは収益構造を直撃しかねないライセンス体系の見直しに慎重だったが,一部のベンダーが市場のニーズに合わせライセンスの見直しに取り組み始めた。
 xSP(各種サービス・プロバイダ)の登場や,ブレード・サーバーに代表されるサーバー統合技術の発展など,ソフトの利用の仕方も大きく変わりつつある。過去に固執するあまり,新しい利用形態に適したライセンスを提供できなければ,ユーザー離れやパートナ離れを招く危険性が増してきた。
 正解は一つだけではない。使用許諾権と利用者の分離,売り上げ連動型料金体系,追加料金を不要にした一律の料金体系の導入など様々。今後は,ユーザーとパートナの支持を得たライセンス制度を導入したソフト・ベンダーだけが生き残ることができる。

図1●新しいビジネスや情報技術の登場,利用形態の変化など,ソフト・ベンダーにライセンス戦略を迫る要因は数多い。
ベンダーは従来よりも柔軟にライセンス戦略を見直し始めた
 チェック・ポイント・ソフトウェア・テクノロジーズは今年8月,IDC(インターネット・データ・センター)業者などを対象にしたセキュリティ関連製品であるVPN-1/FireWall-1 VSX(バーチャル・システム・エクステンション)で新しいライセンス制度を追加した。

 従来のライセンス制度との最大の違いは,料金算定の基準にある(図2[拡大表示])。これまでファイアウオールによって守られる範囲内にあるIPアドレスの数によって料金を算定していたが,VSXではIPアドレスやサーバーの数に関係なく料金が決まる。算定の基準としているのは「異なるセキュリティ・ポリシーがいくつあるか」(卯城大士技術部長)。チェック・ポイントにとって,料金の算定基準の変更は初めて。

図2●チェック・ポイント・ソフトウェア・テクノロジーが「VPN-1/FireWall-1 VSX」で8月から提供した新ライセンス制度の概要。
ファイアウオール内にあるIPアドレス数を数える必要はなくなった

管理工数の削減と料金の抑制

 IDC事業者がVLAN(仮想構内情報通信網)を使って複数の顧客に1台のサーバーでファイアウオール機能を提供するようなケースでは,ユーザー企業ごとにセキュリティ・ポリシーを設定することが多いので,事実上,ユーザー単位で課金できる。IPアドレスを数えなくても,顧客数を把握すれば,料金を算出できる。

 IDC事業者はスペースや管理工数を削減するため,サーバーの統合に力を入れているが,これまでのチェック・ポイントのライセンス制度では,統合によるメリットを十分に発揮することができなかった。

 サーバーを集約するのでスペースは減らせるが,いちいちIPアドレスを数え,ライセンス料金を再計算する必要があるので管理工数は減らないうえ,チェック・ポイントに支払うライセンス料金も抑えることができなかった。しかし,VSXを採用すれば,IDC事業者はサーバーの統合に伴い事務作業の負担も軽減でき,さらにチェック・ポイントに支払うライセンス料金も削減することができるようになった。

図3●マイクロソフトの最近のライセンス制度の変更。
5月に投入したxSP向けライセンスや,8月に投入したレンタル向けライセンスなどで,従来よりも日本企業の利用実態に即した内容を目指した

 マイクロソフトも今年に入ってから相次いで新しいライセンス制度を導入した。その第一弾となったのが,5月から始めたxSP(各種サービス・プロバイダ)向けライセンス。そして,8月にはレンタル事業者向けに新たなライセンス制度を導入した。

 このうち,xSP事業者向けのライセンス契約であるサービス・プロバイダ・ライセンス(MSPLP)の最も大きな変更点は,最終的な利用者がライセンスの保持者と必ずしも同じでなくてもソフトを利用できるようにしたことだ。エンタープライズ本部ライセンシング部の阿部慎吾シニアマーケティングスペシャリストはこう説明する。「2000年10月に当社として初めてxSP事業者向けライセンスを導入したが,利用者がライセンスを所持していることが条件だった。このため,xSP事業者がサービスを提供するためにライセンスを購入することはできず,事業化を妨げる要因になっていた」。

 xSP事業者がライセンスを購入できるようにするととともに,マイクロソフトはライセンスの価格設定も見直し,1カ月単位で自由に課金方式を選択できるようにした(図3[拡大表示])。大企業を中心としたユーザー企業からはユーザー向けライセンス料金に比べて割高に見えると,パートナから批判の声があった料金設定を見直した。

図4●ソフトウエア・ライセンスに対するユーザー企業の要望

 もう一つのレンタル事業者向けライセンス制度も,基本的には利用者がライセンスを所有しなければならないという条件を緩和したものだ。オリックス・レンテックなど4社は,マイクロソフトのアプリケーション・ソフトをハードとともに貸し出すことができるようになった。これまでハードはレンタルできたが,ソフトはレンタルできなかったため,ユーザー企業はソフトを購入する必要があった。オリックス・レンテックの三浦正人営業推進第二部副部長は「研修やイベントでパソコンを短期間利用したいというニーズがある。当社としても営業活動がしやすくなる」と喜ぶ。

(佐竹 三江)