サーバー・メーカー各社のチャネル戦略が一つの壁に突き当たっている。ハードの低価格化にブレーキが利かないだけでなく,仕様や部品の共通化が製品そのものの差別化を難しくする一方だからだ。さらに,メーカー自身が“本業”を忘れたかのようにサービス事業拡大に走っていることが拍車をかける。独自のIT(情報技術)関連サービスを展開するまでに販売パートナが力を付けてきた今,直販部隊との衝突が表面化し始めた。間接販売とは何か,パートナ企業の役割は何か,という根本を,サーバー・メーカーもパートナ企業も再考する時にある。

 IT(情報技術)不況からの脱出口がなかなか見えてこない。本誌のITサービス業況調査でも,2002年7~9月期は過去最悪に落ち込み“二番底”の様相を呈している

 中でもサーバー・ビジネスは厳しさが増す一方だ。ある大手ディーラー系システム・プロバイダの幹部が「一生懸命に営業し台数を2割近く上乗せしても,金額は9割を確保するのがやっとだ」と嘆く声は悲鳴にも近い。

 そこをソフト/サービス事業で補うのが今のシステム・プロバイダ業界の“頼みの綱”とはいえ,ハード市場が動かなければソフト/サービスの市場も動かない。「コンピュータ,ソフトなければタダの箱」も今や「ソフト/サービス,ハードなければ価値生めず」である。

今が“平常”状態?

図1●PCサーバーとUNIXサーバーの出荷状況。
PCサーバーはIA-64を除く

 実際,2002年上半期のサーバー市場は散々だ。IDCジャパンの調査によれば,2002年上半期(1~6月期)のPCサーバーの出荷台数は前年同期比10%減の17万3500台弱,金額は同17.4%減の1093億円強に陥った。UNIXサーバーの出荷台数も同15.6%減の2万4000台弱,金額は同14.4%減の1230億円弱だった(図1[拡大表示])。先の悲鳴を上げた幹部の会社は,むしろ好調なシステム・プロバイダになる。

 こうした状況を,IDCジャパンでサーバー市場全体を見る塚本卓郎アナリストは「PCサーバー市場は下半期のばん回で,通年では大きなマイナスにはならないだろう。だがUNIXサーバー市場は,4半期当たり600億円前後という今の状況が“平常”」とする。

図2●下がらないメインフレームの出荷金額シェア。
米国市場は10%台という

 その理由は「PCサーバーは価格を下げさえすれば売れる商品だ。2002年第2四半期は不況の影響と,HPとコンパックの合併処理のまずさから極端に落ちた。一方のUNIXサーバーは2000年度に発生したテレコム需要そのものが“特需”だった」(塚本アナリスト)からだ。

 さらに,日本市場特有の要因が待っている。メインフレームの出荷額が下げ止まっていることだ(図2[拡大表示])。富士通などが官公庁市場などを中心にメインフレームを売り込んでいる。UNIXサーバーとメインフレームを合わせた大手企業向け市場にあってメインフレームが占める割合は「米国では10%台にまで落ちているのに対し,日本は60 %台を割らない」(塚本アナリスト)という。

図3●2002年上半期のサーバー市場のメーカー別シェア(台数ベース)

 オープン系サーバーが売れてもおかしくない市場をメインフレームが死守することで,市場規模は小さくなる。そこにメーカー各社がOEM(相手先ブランドによる生産)供給を受けてまでサーバー製品を投入しているのだから,メーカー間競争が厳しくなるわけだ(図3[拡大表示])。

メーカーに本業回帰を迫る

 そのサーバー・メーカー各社は今,チャネル戦略を明確に打ち出せず,もがいている。利幅が小さいハードを売り込むために,さらなる値引き合戦を仕掛けていては,パートナ支援の原資はなくなるばかり。旧来のように均等に手厚い支援をさしのべる余裕は,もはやメーカー各社にはない。

 勢い,この不況下でもサーバーを売ってくれる販売力のあるパートナ企業への支援に集中すると同時に,強い他社チャネルを味方に付けるしか策はない。だが,既存パートナを抱えながら新たなパートナ開拓に乗り出せばチャネルの混乱を招く。過去,間接販売で成功を経験したメーカーほど“あちらを立てれば,こちらが立たず”の沼地へはまり込んでいく。

 取り合いになっているシステム・プロバイダの代表が伊藤忠テクノサイエンス(CTC)や大塚商会だ。メーカー各社のパートナ営業担当者は「とにかく彼らに取り扱ってもらう」ことが最終目的になり,パートナ企業とともに考えるべき市場攻略法など,パートナ企業の先にある顧客にまで気が回らない。

 一方で,メーカー各社が“欲しい”システム・プロバイダの側にすれば特定メーカーと心中する気は毛頭ない。強い販売力は,独自のソフト/サービスがあるからこそ。「ハードに何を使うかは最後に決める。顧客の好みや予算に合わせればよい」というマルチベンダー対応は当然で,むしろ「我々のソフト製品選択やサービス商品と相反するような支援策は不要」との考えが強くなる。

図4●選ばれるサーバー・メーカーとしての“本業回帰”が求められている。
自社サービスに自信のあるシステム・プロバイダほどハードへのこだわりが減っているからだ

 実際,自社商品に自身を持つシステム・プロバイダの間には「メーカーは,本業である製品開発,障害対応,マーケティングに徹してくれれば十分」との声が高まっている(図4[拡大表示])。ハード事業が苦しくからといってソフト/サービス事業に自ら乗り出すメーカーに対しては,常に“いつ競合相手に寝返るのか”との不信感は消えない。

質的変化に取り組むチャンス

 もちろんメーカー各社も手をこまぬいているばかりではない。パートナ各社の不信感を払拭しようと,対パートナ窓口を一本化することで距離感を縮めたり,市場での役割分担を模索したりする。パートナ支援の内容も,IT技術や営業ノウハウといった製品依存のスキル教育から,決算書の読み方や中堅・中小企業の経営者の発想法を伝授するなど,ITとは関係ない領域へシフトもし始めた。

 こうした現状を,塚本アナリストは「システム・プロバイダは今こそ,ビジネス全体を見直し質的向上に取り組むべき絶好機だ」と指摘する。好況期には忙しくて掘り起こせなかった業種や企業層,セキュリティといった新規IT分野などに取り組み,たとえ小さくても顧客層を広げておけば「景気回復時には彼らがIT投資を増やしてくる」(塚本アナリスト)からだ。

 不況により,ユーザー企業のIT投資の見極めは厳しくなり,選別眼を磨いている。一度,磨かれた眼は景気が回復しても曇ることはない。そのときに選ばれるサーバーとは何か,IT関連サービスとは何か。メーカーとパートナ企業のそれぞれが答えを出す必要がある。

(志度 昌宏)