ユーザー企業のIT投資パターンが変わった。携帯電話やIP電話、ICタグなどのノンPC端末とブロードバンド環境、こうしたユビキタス時代を先取りするITインフラへの投資意欲は予想を超える。従来型のITサービス市場は確実に縮む。大手による寡占化も進み、労働集約的な仕事の大半は中国などへ流出する。しかし既存の市場の外側に、急膨張する新市場が誕生した。新しいITインフラを日々のビジネスに、経営のイノベーションに活用する企業が増え、システム・プロバイダに斬新な提案を求めている。トヨタ自動車やソニーなどのユーザー企業、事業変革に取り組むシステム・プロバイダの声を基に、この「アウター市場」の攻略法を探る。

(木村 岳史、佐竹 三江)

 「単体のシステム・インテグレーション(SI)だけでは、ビジネスの余地が少なくなる。既存のビジネスモデルは寿命を迎えつつある」。そう話すのは、NTTデータ事業戦略部の吉岡亨マーケティング戦略担当部長だ。

 昨年初めから新規事業として推進する「ITP(ITパートナー)」は、そうした問題意識の産物だ。ITPとは受注型のSIと異なり、ユーザー企業のITを使った新規事業などにパートナとしてかかわり、リスクも取る。SIなどと並ぶ事業の柱と位置付け、コンテンツ配信でイマジカと、バイオ分野など新規事業の開拓を目指して日本たばこ産業と共同出資会社を設立するなど、事業の具体化を急いでいる。

 NTTデータと同様の問題意識を持つシステム・プロバイダは多い。CSKの有賀貞一副社長は「ITサービス業の最近の停滞は、需要と供給のミスマッチによるもの。ITインフラが高度化し、顧客のニーズも進化しているのに、システム・プロバイダは過去のモデル、事業範囲にしがみついている」と語る。

 NECの川村敏郎常務も同意見だ。「ITサービスの従来の事業領域では、もはや成長はない。一方で、iモード関連ビジネスのように、ITサービスの裾野は広がっている。異業種やベンチャーの参入が相次ぎ、多くの企業が山ほどのお金を使っている。そちらに目を向けなければ」。

急膨張するITの「アウター市場」

 既存のITサービス市場の外側に、別のITサービス市場(アウター市場)が存在し、その規模5兆~6兆円―。発注者は主に企業のユーザー部門で、自らのビジネスの高度化や新規事業のために、インターネットや携帯電話はもちろんIP電話、ICカードやICタグなども活用したソリューションを求めている。「アウター(外側の)市場」と呼ぶのは、システム・プロバイダの多くが切り込めていないからだ。

 こうしたアウター市場は、EC(電子商取引)などネットビジネスの登場とともに誕生した。ネットバブルの崩壊で、システム・プロバイダが一斉にECサイト構築・運用などから手を引いた後も、EC関連ビジネスは成長を続け、iモードなどの携帯電話を使ったマーケティングも大きなビジネスとなった。さらに、IP電話の企業内への導入も2003年中に本格化する。自動車に登載した端末を通じて情報提供を行うテレマティックスなども含め、ユーザー企業のIT活用は多様化している。

 ITサービスの範囲も急拡大しているわけだが、現在こうした分野に進出できているシステム・プロバイダはほんのわずかだ。代わりに「ITサービス会社」として活躍しているのは、ユーザー企業やベンチャー企業などだ。例えば大日本印刷。同社のC&I事業部は、インターネットや携帯電話、ICカードなどを活用したマーケティングやCRM(カスタマ・リレーションシップ管理)のアウトソーシングを手掛け、数百億円の事業規模を持つ。