「ITベンダーが言うソリューションは、ユーザー企業が期待するソリューションとは多分別物なのだろう」――。

 サントリーの酒井朋久常務がふと漏らした一言は、ITサービス会社に対するユーザー企業の疑問や不満を象徴している。ITサービス業界で、流行語のように使われる「ソリューション」。しかし、その意味は本来限りなく重い。ソリューションの提供を標ぼうするならば、ユーザー企業の声に真剣に耳を傾ける必要がある。

 本誌はこれまで、システムインテグレータなどのITサービス会社を「システムプロバイダ」と総称していたが、今回の新装刊に合わせ「ソリューションプロバイダ」に改める。ユーザー企業の問題・課題に対する解決策を提供する事業者を意味するソリューションプロバイダは、米国では一般的な用語として定着しており、ITサービス業が目指す方向を最も端的に表しているからだ。

 しかし、ほとんどのユーザー企業は、ソリューションプロバイダを認知しない。相変わらず“ITベンダー”の位置付けのままである。今回の特集では、IT活用で先進的な企業のCIO(最高情報責任者)など17人にインタビューし、「ソリューションプロバイダに求めるもの」を聞いた。併せて、上場企業を中心にアンケート調査を実施し、126社のCIOから回答を得た。その結果は、“ソリューションを提供できていないベンダー”の姿を浮き彫りにした。

 実は、ユーザー企業自身も、彼らの顧客からソリューションの提供を求められている。クレジットカード会社なら“決済ソリューション”、運送会社なら“物流ソリューション”といった具合だ。製品やサービス単体では顧客の支持を得られなくなりつつあるのは、なにもITサービス業に限ったことではない。「我々もソリューションプロバイダを目指している」。今回取材した多くのCIOから、この言葉を聞いた。

 さらにCIOが管掌する情報システム部門も、社内のユーザーに対してITソリューションを提供しなければならない。実際、鹿島では情報システム部門の名称は「ITソリューション部」だ。IT活用などにより靴下の中小卸から専門店をフランチャイズ展開する優良企業に変ぼうを遂げたダンも、情報システム部門を「システムソリューション部」と呼ぶようになった。

 彼らは日々、ソリューションプロバイダを目指し、模索を続けているのだ。つまり、ITサービス会社が提案営業に赴く相手は、ソリューションのプロ、もしくはプロを目指す人たちだ。そう考えると、ソリューション提案は想像以上に難しい仕事であるといえる。

(木村岳史 渡辺一正)