個人情報保護関連法案が衆院を通過し、自治体のIT化の動きが加速する気配。こうした中で、住民や地元企業向けにポータルサイトの立ち上げを計画する自治体が増えている。これまで情報漏えい防止やセキュリティ対策など安全対策が求められてきたが、それだけでなく独自性や地域色があるサイトにするアイデアが求められてきた。

 岐阜県が2003年4月1日に第1次稼働を始めた県民向けポータルサイト*「岐阜ポータル」。ヤフーのポータル構築ソフト「Yahoo!ポータルソリューション」を使って地元企業やベンチャー企業などが共同で開発したものだ。「個人が自分専用のページを作成できる機能などを盛り込んでいる。今後、インターネット経由で提供する新しい住民向けサービスの布石になるシステムだ」と岐阜県情報政策課の中畑和彦主査は話す。

 岐阜ポータルの構築を担当したのは、地元のソリューションプロバイダの電算システム(岐阜市、宮地正直社長)をはじめ、ベンチャー企業のヴァーチャル・エヌ(東京都世田谷区、西野嘉之社長)とフューチャーテック(愛知県名古屋市、内山裕次社長)、ポータル構築ソフトを開発したヤフーの4社。いずれも自治体向けビジネスでは新顔と言える。ヤフーの藤沢秀樹エンタープライズソリューション事業部営業部長は「日本で初めて自治体が採用したケース」と話す。

 e-Japan構想をきっかけに火がついた自治体市場。今年5月上旬、個人情報保護関連法案が衆院を通過し、今国会で成立がほぼ確実になり、自治体のIT化に拍車がかかる。発注する自治体が最も重視する選定条件は、もちろん情報漏えい防止やセキュリティ対策などの安全対策。しかし、岐阜県のように安全対策だけでは満足せず、「プラスアルファ」のアイデアを求める自治体が増えている。

 今年7月に「岡山経革広場」というポータルサイトを開設する岡山市もそんな自治体の一つだ。このサイトは地元の中小・零細企業の活性化を狙って立ち上げたもの。サイトの構築や運営を担当するのは、マイクロソフトと地元のソリューションプロバイダであるシステムズナカシマ(岡山市、中島義雄社長)だ。サイトの原型である経革広場は、マイクロソフトが中小企業市場開拓のため数年がかりで展開しているマーケティング戦略の一環として昨年12月から運営を始めたポータルサイトである。

サイトに“地方色”を追加

 岡山経革広場はマイクロソフトの経革広場の基本構造をそのまま利用して、市独自のコンテンツやサービス、コミュニティ機能などの“地方色”を加える。その地方色を添える役割を担うのがシステムズナカシマだ。岡山市も中小・零細企業向けの情報のほか、行政サービスについての情報を提供する。マイクロソフトで経革広場の企画などを担当するゼネラルビジネス統括本部パートナー戦略本部経革広場グループの鈴木龍雄課長は「岡山のケースは、経革広場初のローカル版だ」と話す。

 岐阜県と岡山市の事例に共通するのは「システムを導入することは目的ではない」と考えていることだ。岐阜県の中畑主査は「今年4月にオープンした第1次システムのRFP(要求仕様書)を作成するまでの約半年以上、たくさんのソリューションプロバイダの営業担当者と話をするうち、互いに知恵を出し合って議論する雰囲気ができた」と話す。単にシステムを売り込もうと考えていたソリューションプロバイダは早い段階で姿を消した。

 IT化を積極的に進める岡山市の廣田清志情報政策担当参与も同意見。「システムを売り込むという姿勢のソリューションプロバイダが多く、これだというアイデアを出してくれるところはまれだ」と指摘する。

(佐竹 三江)