ソリューションプロバイダが社員に取らせたいIT関連資格は、技術者に最も取得してほしいのが「情報処理技術者プロジェクトマネージャ」、営業担当者に最も取得を期待するのは「情報処理技術者上級アドミニストレータ」ー。 こんな結果が、本誌の独自調査から浮かんできた。昨年調査では、資格取得に対するROI(投資対効果)から公的資格重視の傾向が出ていたが、今回はさらに資格の「選択と集中」が進んだ。ベンダー系資格でも、営業効果の高い資格に限って取得を促す動きが目立ってきた。 こうした背景にはITスキル標準(ITSS)の台頭がある。ITSSの普及を視野に入れた人材育成マップを描き、それに沿った資格取得が必要になっている。

図1●ソリューションプロバイダが社員に取らせたいIT資格
技術者向けトップは「情報処理技術者プロジェクトマネージャ」、営業担当者向けトップは「情報処理技術者上級アドミニストレータ」
 「IT業界全体が、右肩上がりの成長に浸りきり、プロフェッショナルな人材育成を怠ってきた。いずれ優秀な技術者をそろえた海外企業が日本市場に本格参入してくる。その時に生き残るためには、技術力回帰を急ぐ必要がある」。

 アルゴ21の都筑亨人材開発部長は、IT産業にかかわる人材育成策に強烈な警鐘を鳴らす。

 都筑部長の警鐘に呼応するかのように、有力ソリューションプロバイダの人材育成に向けた資格取得戦略が大きく変わり始めている。本誌が、この9月下旬から10月上旬にかけて有力ソリューションプロバイダ116社を対象に実施した「いる資格、いらない資格」に関する調査では、資格の「集中と選択」が進んでいることが浮かんできた(回答社数51社、有効回答率44%)。

プロマネに最高100万円支給

 本誌の「いる資格、いらない資格」調査は、昨年に続き2回目。前回調査では、公的資格重視の姿勢が明らかになった(本誌2002年5月10日号の特集記事)。ベンダー系資格は、製品の機能やバージョンに依存し、資格取得に投資してもすぐに陳腐化してしまいがちなことを嫌う傾向が強まっていた。人材育成のROI(投資対効果)を重視し始めたからだ。

 今回の調査でも、公的資格重視の傾向は変わらない。資格の有無を月給に反映させているソリューションプロバイダは51社中わずか6社で、ほとんどが取得時の一時金(報奨金)によって資格取得を動機付けている。情報処理技術者系の資格は、その一時金支給額の上位を占める。しかし、一時金平均支給額を前回と比べれば、同じ情報処理技術者でも「いる資格、いらない資格」に2極化している。

 情報処理技術者の上級資格であるシステム監査やシステムアナリスト、プロジェクトマネージャ(PM)は、いずれも一時金の平均支給額が15万円前後。それに対して、アプリケーションエンジニアやテクニカルエンジニア(ネットワーク)、ソフトウエア開発技術者などは昨年から10%以上も支給額がダウンした。

 こうした傾向は、技術者に取らせたい資格の順位とも連動する。システム構築の上流工程にビジネスをシフトしたいソリューションプロバイダが、プロジェクト管理やコンサルティングを担うPMやシステムアナリストの不足に悩む実態が表れている。

 NECソフトが、上流工程へビジネスの軸足を移すために、PMの育成を重点目標に据えている1社。技術者に取らせたい資格第1位の情報処理技術者プロジェクトマネージャと、第2位のPMP(プロジェクト・マネジメント・プロフェッショナル、認定は米PMI=プロジェクト・マネジメント・インスティチュート)を中心に有資格者を増やしている。現在、PMPの有資格者数は100人弱で「ソリューションプロバイダの中でも1位か2位を争う規模」(福嶋義弘人事部人材開発マネージャー)という。

 日本ユニシスもPM育成に力を入れている。昌三サービスビジネス開発本部サービスビジネスイニシアティブ部長は、PMP資格者数が増えたことで「プロジェクトで問題が起こる率が減っている」と話す。

 そこでユニシスは、複数のプロジェクトを完遂できる能力を問うP2M(プロジェクト&プログラム マネジメント)の初級レベルであるPMS(プロジェクトマネジメント・スペシャリスト)の資格に注力し始めた。

 P2Mは、PMCC(プロジェクトマネジメント資格センター)が認定する日本発のPM資格で、経済産業省の支援を得て2002年にスタートした。過去3回の試験で、830人がPMS資格を取得したとされる。部長はPSMシフトの理由を「顧客に言われたとおりに作り、納期に間に合わせるというプロジェクトの完遂率を競うだけでは差異化できない。顧客満足度を高めるには、もう一段上に立ち、顧客の目線でプロジェクトの中身を議論できるかどうかが重要になっているため」と説明する。

(渡辺 一正)