伊藤忠テクノサイエンスが満を持して投入したブレードサーバーのイージェネラ。UFJ銀行が業界に先駆けて導入した。
金融機関は実績のないシステムを嫌う。売り込み成功の理由とは。

 伊藤忠テクノサイエンス(CTC)金融システム営業本部営業第1部第2グループの本多昭義氏は2002年末、UFJ銀行システム企画部がある本社ビルに顔を出した。「Linuxを使った提案はないのか」。UFJ銀行から出された要求に対応すべく、CTCが極秘に準備を進めていた米イージェネラのブレードサーバー「BladeFrame」の資料を持ち込むためだ。

 本多氏はそれまで、別のUNIXサーバーで提案していた。しかし、コスト削減策を模索したいUFJ銀行は、当時脚光を浴び始めていたLinuxへの関心を高めていた。この商談のライバル企業は、Linuxとブレードサーバーを組み合わせた提案をぶつけてきた。

 明けて2003年春。本多氏はUFJ銀行の担当から、失注を告げられた。実績不足―それが理由だ。UFJ銀行は確実に動作する保証を求めたが、残念ながらイージェネラには国内で実績はない。仮に動かなかった場合、他のUNIXマシンに無償で入れ替えるといった担保は、メーカーでないCTCにとって打ち出しにくかった。

同時期の別案件に再トライ

 ほぼ同時期に、本多氏はUFJ銀行から打診を受ける。「他の案件がある。イージェネラはそれに使えないか」という話だった。それが今回獲得した「総合金融プラットフォーム」だった。これは、2001年から稼働しているUNIXベースのシステム基盤の名称で、銀行本体の市場系システムだけでなく、グループ企業向けのシステムもその上で稼働している。管理運営はUFJグループのソリューションプロバイダであるユーフィット(名古屋市中区、藤原曉男社長)。今回は、その基盤を増強するものだ。

 これまではUNIXサーバー十数台の上で、合計17システムが稼働してきた。しかし、限界が近づいていた。例えば、1万5000社、2万人規模の会員企業向け金融情報配信サービス「インフォメーション・ウェーブ」では、1日に十数万アクセスがある。しかも、「今でも、中堅・中小企業を中心に会員数がどんどん増えている」(UFJ銀行システム企画部の滝沢卓調査役)という。

 さらに新規開発するシステムも続々と用意されている。個人向けのデリバティブ(金融派生商品)の約定関連の新システム、グループ企業で使う新基幹業務システムなどを2004年春には稼働させる。増えるトラフィックに応答できるシステム基盤の構築が急務だった。

商用UNIXと数千万円の開き

 UFJ銀行は当初から、ブレードサーバーを有力な選択肢としていた。というのも、個人向けサービスはどのくらいトラフィックが増えるのか予測が難しい。トラフィック増加に合わせて処理能力を拡大できることが絶対条件になる。

 加えてコストも、重要なポイント。実際に投資するユーフィットにすれば、総資産の1%を超えるようなインパクトのある投資。なるべくなら安くて効果のあるシステムを選びたい。UFJ銀行は、ブレードサーバーが数億円規模の最小構成でも、UNIXサーバーよりも数千万円は安くなるはずと踏み、コスト効果が高いと判断した。

(渡辺 一正)