日本IBMや富士通の営業やソフト・サービス部門の幹部から最近、顧客フォーカス、顧客セントリック、顧客サクセスなどという、いずれも「顧客」に焦点を当てたキャッチがポンポン飛び出すようになった。同時に、両者はこれを実践するため昨年から今年にかけて一線の組織体制を変更し始めている。

 この話を聞きつけた日本ユニシスの幹部は「当社は昔から顧客重視の前線組織だ。だから顧客満足度が高い」と、先行者として一日の長を誇る。だが、顧客志向の割には業績に結びついてこないのだ。また、ストレージやパソコン、プリンターといった特定商品に強みを持つ総合IT企業は、事業のサービスシフトの過程にある。おいおい2社を学習して、体制強化に乗り出してくるだろう。

 サン・マイクロシステムズにいたっては、直販と自社サービスを持たないため、顧客志向は最も痛いところ。聞こえてくるのはテクノロジの話ばかりである。米IBMが社員に対して「IBMの将来の価値」を尋ねたところ、「顧客との関係」「革新」「信頼」の3つに分類された。サンはそれをきっと“たそがれIBM”と皮肉るに違いない。しかし、この結果が、今のITビジネスの真髄に触れている。技術は急速に変化するため、企業ユーザーはIT製品を以前ほど多く買い求めなくなった。信頼できるパートナーとの、例えばアウトソーシングの関係に投資したほうが良い、に変わっている。技術よりもタッチを重視しているのだ。

 サンが期待する大手販売チャネルも、業界に影響力あるトップが退任してこの方、精彩を欠いている。あろうことかライバルの日本HP(ヒューレット・パッカード)と蜜月関係を築きつつある。人頼みは不安定だ。サンはそろそろ、自社の販売・サービス組織獲得に挑戦する時が来ている。米国では売り上げの過半数が直販でかつ直サービスだ。米サンのスコット・マクニリー会長は、ことあるごとに「キャッシュの豊富さ」を自慢する。日本法人のダン・ミラー社長は、そこからキャッシュを引き出し「ソリューション会社にサンを変える」ことを志向してもいい。

 IBMと富士通の顧客フォーカス戦略は、ITマーケットでより収益性の高いところへ登ろうとする積極的な取り組みである。そこを理解しないと評価を見誤る。ひとつには、熾烈化する一方のハードやソフトの価格競争に対する答えだ。ハードやソフトは、コモディティ化の一途をたどり、収益は下降している。また、大手企業ユーザーを中心に、IT投資の削減レースのようなことが行われており、IDCジャパンによれば、企業は2004年のIT投資を2.2%以上増やす予定はない。

 2000年から3年連続で市場は縮小している。富士通の営業幹部は「これが今後のITの新しい市場基盤だ。IT業界は、全体で見て沈みつつある土台の上で厳しい陣取り合戦をしている。だから今の販売戦略のキーワードは、優良顧客を深掘りする“顧客フォーカス”になる」という。優良顧客に張り付いて、顧客の財布を握ってしまうというのは大げさだが、一銭たりとも他社には回さない気構えだ。

 そのため富士通は03年10月、約300社と見られる顧客に従来の担当営業に加え、業種業務に精通した担当SE(システムエンジニア)を500人配置した。これまでSEは営業からの発注に基づいて動いたが、今度は日常ベースで顧客のシステムや顧客ニーズを吸収し、ビジネスに結びつける。3年前のヘルスケアで試行し、大手病院市場シェア40%獲得の経験を全業種に展開した。

 日本IBMは、もう少し幅が広い。顧客の調達業務や顧客サービスの改善に手を貸すパートナーのような存在を目指している。組織的には1月から、顧客個別対応の業種別営業本部内にコンサルタントを含めたサービス事業の代表、同ハードやソフト製品事業、場合によっては研究開発部門まで動員し、顧客の切り口で見たソリューション提供に徹しようとする。これを「4 in the Box」という。富士通のスタイルはさしずめ「2 in the Box」。ともに大手顧客との関係を確保・維持するための基盤の構築だ。