中堅・中小企業のIT化は着実に進んでいる。サーバー導入企業のうち約6割がグループウエアを、約3割がERPを利用あるいは構築中だ。OSはWindows NTからWindows 2000への移行がこの1年で大きく進んだ。Linuxへの関心も高まっている。

 ノークリサーチは、昨年11月から今年2月にかけて、中堅・中小企業を対象にIT導入実態を調査した。毎年実施している調査であり、IT化の推移がよく分かる。

図1●中堅・中小企業におけるITの導入状況・導入予定(複数回答)

 まずアプリケーションとITインフラの導入状況から見ていこう(図1[拡大表示])。中堅・中小企業のシステムは、オフコンによる集中処理方式からクライアント/サーバー型の分散処理へ、さらにWebコンピューティングへと変わりつつある。それを裏付けるように、ネットワーク関連インフラの整備が進んでいる。サーバーを導入している企業の実に97%がLANを導入している。イントラネット(60.5%)、ファイアウオール(59.9%)、無線LAN(38.2 %)も導入率が高まった。

 アプリケーションでは、グループウエア(56.5%)、ERP(29.0%)、データウエアハウス(22.0%)の導入が前年に比べ進んだ。グループウエアが普及したのは、(1)ネットワークインフラが整備された、(2)パソコン1人1台環境が整ってきた、(3)情報の共有・活用の重要性が中堅・中小企業にも浸透してきた、(4)製品が安くなった、などが要因である。

 一方で新ITソリューションとして注目されている、ASP、CRM、CTI、SFA、SCMは横ばい傾向が続いている。WebサーバーやWebのホスティングも導入率を落としいるが、これは、一度ホームページを出したものの、その費用対効果や更新の手間から、見直しを図っているためと見られる。

ITに対し経営への即効力を期待

図2●中堅・中小企業のITに対する現状認識と期待(複数回答)

 次に、ITに対する現状認識と期待を聞いた結果が図2[拡大表示]である。中堅・中小企業がIT導入に際して望んでいるのは、やはり企業経営への貢献だ。「販売・営業に直接役立つシステムにしたい」(31.5%)、「経営の意思決定に役立つシステムにしたい」(31.4%)が3割を超えている。ITを先行投資として考えるのではなく、即効性を期待している。「基幹業務系を統合化、データを一元管理したい」も30.1%と高い。このニーズがERP導入を駆り立てているのだろう。

 だが全体を通じて最も高かったのは、2004年調査から項目に加えた「セキュリティの強化」(36.1%)である。情報システムやネットワークはもはや企業活動に不可欠になってきている。その一方で、ウイルスや情報漏洩の被害も広がっており、いかにシステムやネットワークを守るかが、中堅・中小企業でも大きな関心事になっている。

 今回、「現状のままで問題なし」が23.2%と6.8ポイント増えている点も目立つ。「現状は様子見」も20.2%と高い。景気は回復基調だが、まだ実感は乏しく引き続き先行きが不透明なため、IT投資を控える中堅・中小企業は多いようだ。既存のIT資産をなるべく有効活用しようという選択が増えるのは当然の傾向である。

NECがトップ堅持、デルが躍進

図3●設置サーバーのメーカー別シェア
図4●サーバーの購入先

 調査では、サーバーのシェアも調べた。今年もNECが23.6%とトップだが、2位の富士通が20.4%と接近している(図3[拡大表示])。3位は日本IBMで変わらないが、デルが12.2%と着実にシェアを高め4位に食い込んだ。逆に日本ヒューレット・パッカード(HP)は9.9%とシェアを落としている。

 上位3社は、オフコンユーザーをサーバーにリプレースすることで安定的にシェアを確保している。販売チャネルが強いことも一因だ。

 実際に、中堅・中小企業の多くはサーバーをディーラーやコンピュータ販売店から購入している(図4[拡大表示])。現在のサーバーの販売チャネルはオフコン販売の流れを引き継ぐ形で発展している。

 メーカーがユーザーに直接販売する場合もあるが、パートナーによる間接販売とはすみ分けがなされている。メーカー直販が対象とするのは大企業が中心だ。年商でいえば500億円を超えるような企業である。中堅・中小企業の場合は、システム規模が小さいため、メーカーの営業やSEが直接対応していては採算が合わないからだ。しかしこのすみ分けも、崩れ始めている。

メーカーの直販は約2割

 特にデルと日本HPは、Webや新聞、雑誌などのメディア広告で盛んに営業展開をしており、中堅・中小企業市場に対してダイレクトマーケティングを推進している。この動きに追随するように、国産メーカーも中堅・中小企業に対して直販を積極的に行うようになってきている。

 ハードによる差異が少なくなり、販売店の多くが特定のメーカーに固執せず、取り扱い製品をマルチベンダー化していることも理由だ。もはや従来のチャネル戦略のように、販売店にロイヤルティーを高めさせるような施策はめっきり影を潜めた。代わりに、サプライチェーンを充実させ、高性能のハードをいかに早く安く納品するかに腐心している。それで最も成功しているのがデルである。

 デルの躍進ぶりは驚異だ。直販だけで、中堅・中小企業にこれほど短期間に浸透させられるとだれが予想しただろうか。サーバーの世界でもデルモデルを確立したと言えるだろう。

 図にはないが、調査ではサーバー導入時に何を重視するかも聞いている。結果は「価格」(87.7%)と「性能」(87.1%)が圧倒的に高かった。以下、「サポート・保守の充実」(72.0%)、「拡張性」(30.7%)、「営業の提案力」(20.9%)、「メーカー名」(26.3%)、「値引き対応」(16.4%)といったところが続く。現在のサーバーは、ハードの機能的な違いがほとんどないため、コストパフォーマンスに目が向くのは当然と言える。

 オフコン時代には、作りこみのシステムであったことから、価格よりもサービス/サポートの充実度や営業の提案力が重視されていたが、ユーザーの力点が移っている。販売店も、サーバーに自社のパッケージや市販パッケージを載せて提案する販売方法に変わってきている。

Windows 2000への移行が進む

図5●導入サーバーのOS
図6●サーバーの導入計画
調査の概要●ノークリサーチが2003年11月から2004年2月にかけて、サーバーを導入している全国の中堅・中小企業約7000社に対してWebおよび郵送でアンケートを実施し、628社から有効回答を得た

 サーバーのOSについて見たのが図5[拡大表示]である。今年の特徴は、Windows 2000が39.7%と大きく増えたことだ。出荷から年数がたち安定度を増して、いわゆる“枯れたOS”として評価の高かったWindows NTは、3年前までは圧倒的に利用されていた。それが徐々にポイントを落とし、ついにWindows 2000とほぼ並んだ。2000年に出荷されたWindows 2000はWindows NTの後継OSであり、ようやく移行が進んできた。

 WindowsサーバーOSの最新版は、Windows Server 2003だが、この利用率はまだ1.3%にすぎない。中堅・中小企業は新しい技術を導入することについては保守的な反応を示す傾向がある。また、対応するアプリケーションが出揃うまでに時間もかかる。Windows Server 2003は、Windows 2000の導入の動きを見ても、本格的に導入されるのは2005年以降になるのではないだろうか。

 一方、Linuxは2.9%から4.9%と大きく伸びたものの、Windowsに比べると、実際の利用率はまだまだ低い。ただ、図1でLinuxシステムを導入または構築・設計中が18.6%あるため、今後はさらに普及が進みそうだ。

サーバーの導入意欲はやや減退

 今後のサーバーの導入意欲はどうか。「具体的に導入を検討/計画している」が19.6%と昨年に比べ3.1ポイント減っている。一方で、「導入予定はない」が昨年は31.5%だったのに対し、今年は45.9%と大きく増えた(図6[拡大表示])。中堅・中小企業のサーバー導入意欲は低調と言わざるを得ない。

 サーバー導入を予定・検討している企業での予定時期では「半年以内」が34.9%と最も多い。「1年以内」が前年に比べ割合を落としている。ひとたびサーバー導入を計画・検討すると、その導入予定時期は早まってきている。基幹系業務などの大掛かりなシステムよりも、グループウエアやWebサーバーなどの単一用途に絞った情報系システムの導入が多く、すぐに活用することを前提としているために、半年以内に導入する割合が多いのではないだろうか。

 サーバー導入を決定する部門は、「IT部門が推進、経営者が決定」(69.3%)と圧倒的に多かった。以下、「経営者・役員が推進役になる」(11.1%)、「専任の推進リーダーが検討、導入を進める」(10.5%)、「経営・IT・現場部門からなるプロジェクトチームで推進」(6.4%)という順だった。

伊嶋 謙二(いしま けんじ)/ノークリサーチ代表
1956年生まれ。矢野経済研究所を経て98年に独立し、ノークリサーチを設立。IT市場に特化した調査、コンサルティングを展開。特に中堅・中小企業市場の分析を得意としている。