IP-VPNと広域イーサネットという2つの通信サービスが順調に市場を伸ばしている。ただしリプレースに頼った営業手法だけでは、近い将来に限界が来る。潜在需要は中堅・中小企業にもある。アプリケーションの提案から、その需要を掘り起こせる企業にチャンスが待っている。

 IP-VPNと広域イーサネットは、ともに通信事業者の網をユーザーが自営網のように使えるVPN(仮想私設網)サービスであり、使い方も近い。現在、その需要をけん引しているのが、フレームリレーなど“レガシーサービス”からのリプレース案件。最近では大手銀行の勘定系など、専用線やATM(非同期転送モード)が主流だったミッションクリティカル業務でも導入実績を上げ始めた。

 こうした勢いに乗り、両サービスを合わせた2003年度の市場規模は、サービスを提供する主な通信事業者8社の総回線収入ベースで推計2600億円に達した。今年度の市場規模は4000億円に迫る勢いだ。特にIP-VPNより後発だった広域イーサの伸びが著しく、今年度は市場規模の差が一気に縮む。

 回線数で見れば、IP-VPNは2003年度末で累積26万と、同5万8000だった広域イーサを引き離している。だが回線単価は、IP-VPNが年間60万~70万円なのに対し、広域イーサは同100万円台~200万円強と高い。10Mビット以上の高速回線は、広域イーサが売れ筋になっているからだ。

「取り次ぎ」と「再販」の2形態

 しかし、従来の販売手法ではその成長も長くは続かない。「大企業への販売がほぼ一巡した」(パワードコムの須合浩司法人ネットワーク事業戦略部長)ことに加え、事業者間の料金競争が激化しているからだ。壁を突破するカギを握るのが、「中堅以下の企業を開拓できるか」(日本テレコムの杉田弘明プロダクト統括本部マーケティングプロモーション部プランニンググループアシスタントマネジャー)。そのために、多くの通信事業者は間口を広げてパートナーを募っている。

 通信事業者が採用するパートナー制度には、顧客を事業者に紹介する「取り次ぎ」と、事業者からサービスを仕入れて顧客に小売りする「再販」の2種類がある。

 取り次ぎの役割は回線導入の支援までで、顧客とのサービス提供契約は通信事業者が交わす。WAN分野に新たに手を染めるパートナーや、手離れよく回線を売りたいパートナーに向く形態だ。報酬は契約高に応じたインセンティブ(販売奨励金)で、一般には成約時に一括で支払われる。ただし、長期契約の顧客獲得を励行するため、ケーブル・アンド・ワイヤレスIDC(C&W IDC)など一部事業者は契約期間にわたって月額で奨励金を支払っている。

 これに対して「再販」では、パートナーが直接顧客と契約を交わし、課金から障害対応まで顧客サポートにも責任を持つ。パートナーの収入は回線の小売り料金と卸料金の差額であり、販売実績を上げたパートナーほど実質的な卸料金が下がる仕組みだ。

 再販のメリットは、料金も含めてパートナーが回線の売り方を一任されていること。自らの裁量で、小売り料金を競うことも、自社サービスと組み合わせパッケージ料金で差異化を図ることもできる。

(玄 忠雄)