「君の優しい顔を見ると、なぜか君から買わなくちゃ、君に頼まなくちゃという気にさせるんだな」―。奥迫は顧客から冗談混じりによくこう言われる。奥迫が重視している「顧客と一緒に悩む」という営業スタイルが奏功しているからだ。目の前にいた営業マンが、いつの間にか自分たちの横にいて、課題解決を一緒に考える。本人は意識してはいないが、顧客はその導き出された提案に乗らなくてはという気持ちに追い込まれてしまうという。

 奥迫が担当するソリューション営業は、他部門が開拓したり既に取引がある顧客から、新たなニーズを探り出し、ソリューション提供につなげること。元々「顧客と一緒に悩む」ことが仕事でもあるが、奥迫は商談獲得を急がずにその役割に注力する。理由は「顧客のことを徹底して知り、知恵を絞る。そうしなければ、自分自身が仕事を楽しめない」からだ。

 これまでに最も手応えをつかんだ商談は、以前から付き合いがあったある大手企業から新規に受注したEAI(エンタープライズ・アプリケーション・インテグレーション)システムの構築案件。当時、経営体制の刷新に取り組んでいたその企業に対し、奥迫は1年間にわたってヒアリングを行い、課題解決に知恵を絞り、新たな提案を出した。

 その提案とは顧客情報システムの再構築。当時、その企業の基幹業務システムでは、商品・サービスごとに顧客情報を管理していたが、これを顧客ごとに利用しているサービス・商品を管理する形に変えることを提案。その結果、既存のデータベースを生かしたまま顧客情報を別の観点で閲覧・管理できる新システムに結びつけた。「育てて収穫する、とはこういうことかと分かった気がする」と奥迫は振り返る。自分の営業スタイルに自信を深めた商談になった。

 そんな奥迫のモットーは「とことん仕事をしたら、とことん遊ぶ」。今は家庭の事情で難しいが、以前は大きな仕事を片づけた後は職場仲間と“豪遊”することで名を馳せていたという。

奥迫 勇一郎(おくざこ ゆういちろう)氏
日本情報通信 カスタマ・バリュー推進本部 第1ソリューショングループ課長
1968年広島県出身。91年に大学卒業後、日本情報通信に入社。ソフトウエア開発本部などシステム開発E畑を歩んだ後、96年に営業部門に異動し、2004年より現職。営業職に就いてから、社長賞を4回受賞。持ち歩く荷物はごく普通でも「顧客の言葉は1字1句もらさずにメモを取る」という。ニュアンスを正確につかむためだ。


=文中敬称略=(中井)