流通分野で食品卸が事業領域を拡げている。ITを駆使した物流拠点への投資と、再編による規模拡大で、流通の効率化を主導しているからだ。ただし巨大卸のITパートナーは既存のソリューションプロバイダが強い。新しく食品卸業界に食い込むには、中堅以下の再編の動きをうまくとらえるべきだ。

 「卸の“中抜き”が始まる」「メーカーと小売りの直接取引が台頭する」―。流通業界で、つい最近まで将来の危機がささやかれた食品卸が大きく存在感を増している。理由は、小売りとメーカーの間で業務範囲を着実に広げ、物流の効率化を主導し始めたからだ。

 その代表例が、特定の小売業向けに商品の集配業務を請け負う専用物流センター(SDC)。商品ラインアップを多くそろえ、広域エリア内の店舗に一括配送したり、棚割りを想定して仕分けしたりすることで、物流と店舗運営のコストを引き下げる効果をもたらした。

 99年にイトーヨーカ堂からSDCの運営受注を獲得し「国内で先駆けとなった」(伊藤忠食品で物流・情報システム本部長も兼務する西村均専務)と自負する伊藤忠食品は、現在まで22カ所のセンターを運営。他の食品卸各社もSDCの設置数を急拡大中だ。

 一方のイトーヨーカ堂も、SDCへの依存度を高めている。例えば関東では、神奈川地区を伊藤忠食品、都内と埼玉の一部の地区を菱食、千葉地区を三井食品といったように、複数の食品卸にSDCの運営を委託する体制を築いた。

 食品卸の存在がより小売業に近づいた点で注目できるのが、菱食が30億円を投じて生活協同組合のコープこうべ向けに6月に稼働させた「魚崎浜要冷集配センター」だ。店舗向けに加え、商品配達サービス「ひまわり」向けに生鮮や冷凍食品を戸別に箱詰めする機能まで備えたからだ。コープこうべの業務は、出荷された箱を自社のトラックに積み替え、利用者宅に配るだけで済む。仕分け作業を効率化するため、魚崎浜センターでは、作業員に発注情報を元に商品の箱詰めを指示・確認したり、作業時間を管理したりする仕組みなどを構築した。

IT投資で卸の付加価値を高める

 食品卸が注力するのは、SDCのように小売業やメーカーが行っていた業務を一部肩代わりしたり、店舗運営コストを下げられるような物流機能を磨くことである。

 菱食の楠堂昌純ロジスティクス統括部情報リテラシーチームリーダーは、「ITをはじめとする設備投資の主な目的は2点。我々の業務の付加価値を高めることと、我々自身の運営コストを削ることだ」と語る。

 基幹業務システムの刷新で、卸の機能アップを図ったのが日本アクセス(旧雪印アクセス)。チルドなど低温帯食品に強い同社は、2004年2月から50億円超を投じて新基幹業務システム「Captain」を稼働させ始めた。年度内にもすべての物流拠点に導入する予定。(1)商品の受発注や決済を扱う「商流」と、商品を運ぶ「物流」を分けて管理できる、(2)入庫・出庫だけだった商品管理に日数管理などを追加した、などが機能強化点だ。

 例えば(1)の「商流・物流の分離」によって「トラックの台数を1割は削減できる」と讃岐博行情報システム部IT企画チーム部長は胸を張る。新システムでは商流と物流を独立して最適化できるため、受注を受けた隣のエリアから商品を配送するなど、コストを考慮した柔軟な業務運営が行えるからだ。

(玄 忠雄)