NECが誇る通信の“総本山”、我孫子事業場のお膝元で異変は起きた。“純粋”SIPサーバーを担いだ日本コムシスが、我孫子市のIP電話システム導入商談でNECを退け勝利したのだ。 (文中敬称略)

 8月16日、我孫子市役所と市内の出張所や図書館、保育園といった関連施設37カ所を結ぶIP電話システムが稼働を開始した。地方自治体がIP電話を全面導入した全国でも珍しい例だ。

 「何よりも、通信費を大幅に削減できることが魅力だった」。IP電話導入の推進役を務めた総務部管財課主査長の今井政良は、導入に踏み切った理由をこう話す。実際、導入前には毎月約200万円にも上っていた電話料金が、稼働後は120万円前後になる見通しだ。

競争入札でNEC勢がまさかの敗北

 千葉県我孫子市は2004年4月に「我孫子市IP電話システムリース契約」の入札公示をWebサイトに掲載した。応札企業の業種はリース会社で、さらにIP電話の案件にかかわった実績を条件とした。

 入札案件の公示を知った日本コムシスのIT推進本部商品企画部IP電話オーナー担当部長、遠藤了は、日本電子計算機、日立キャピタル、住商リースの3社にそれぞれ協業を持ちかけた。3社を通じて自社が販売する「日本コムシスSIPサーバシステム」を提案するためだ。応札企業はこれら日本コムシス勢3社のほか、NECリースとNTTリースの2社を加えた5社だった。この2社はNECと組み、NEC製IP電話サーバー製品SV7000を核としたシステムを提案したとみられる。

 しかし我孫子市が出したシステム要件を満たしたのは、日本コムシス勢の提案だけだった。SV7000を提案した2社はこの段階で脱落、最終的に我孫子市は、残った3社中最も低価格だった日本電子計算機に発注を決めた。

NECの通信の総本山で異変

 NECが落札できなかったことに驚いた関係者は少なくない。なぜなら、我孫子市にはNECにおける通信技術開発の総本山とも言われるNEC我孫子事業場があるからだ。我孫子市役所の基幹業務システムが稼働するメインフレームはNEC製だし、PBX(構内交換機)もNECがNTT東日本にOEM(相手先ブランドによる生産)した製品。庁内LANを構築したのもNECだ。IP電話もNEC、と考えても不思議はない。

 日本コムシスが提案したのは、SIP(セッション・イニシエーション・プロトコル)サーバーだけで電話機能を実現するシステム。民間企業で多少の導入例はあるものの、自治体のIP電話事例はシスコシステムズ製品か、あるいはSV7000のようにPBXとSIPサーバーのハイブリッド型製品を使ったものばかりで、“フルSIP”の例はなかった。日本コムシスの遠藤は「要件に合致している自信はあったが、正直言って勝てる確証はなかった」と振り返る。なぜこのような“番狂わせ”が起きたのか。

(佐竹 三江)


本記事は日経ソリューションビジネス2004年9月30日号に掲載した記事の一部です。図や表も一部割愛されていることをあらかじめご了承ください。
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