オフショア開発(ソフト開発の海外アウトソーシング)の拠点としてベトナムが注目を集めている。日本にとっては中国以上にビジネスがしやすいパートナーになる可能性がある。

 ベトナム政府は今、IT産業を短期間に発展させるため数々の施策を打っている。大きくは(1)インターネット環境の整備、(2)エンドユーザーや教育者を含めたIT関連人材の育成、(3)通信工業の発展、(4)これら3つのインフラと人材、工業を国民に普及させるための電子政府や各種取引の電子化、投資促進などの優遇策の推進、の4つを重点施策に挙げる。

 中でも、海外市場からのソフト開発を請け負うオフショア開発は、投資促進とIT産業が伸びるためのマーケット獲得の両面から重要だ。既に欧米市場からのオフショア開発は軌道に乗っているとする。

 副首相を委員長に置く政府ICT運営委員会のホアン・クォク・ラプ事務局代表も「今後、5年以内に日本市場のニーズに合わせた基準や施策を作る。日本からも、より具体的なニーズや提案が必要だ」と、日本からの発信を期待する。

発展途上だが中国にない魅力が

 日本のオフショア開発拠点の地位を獲得した中国と比べれば、ベトナムは“小国”だ。

 同国のIT産業規模は、2002年に4億米ドル。うち、ソフト/サービス市場は2002年に7500万米ドルで、2003年は前年比41%増の1億2000万米ドルにまで伸びたとする。ソフト会社としての登録は2000社を超えるが、実際に事業展開しているのは400社程度で、技術者数は2002年に8000人だった。

 世界各地のオフショア開発に詳しいアルゴソフトの岡崎邦明社長は「人材供給源やオフショア開発の経験などを考えれば、ベトナムはまだまだ発展途上にある」と見る。実際、中国の人口13億人弱に対し、ベトナムの人口は8100万人。IT産業に従事する人材比率が同じだとすれば、ベトナムがオフショア開発などに供給できる人材層は中国の16分の1程度になる。

 それでもベトナムが注目される理由がある。現地に進出しているソフト会社などの担当者の多くが「社会主義国ながら政治・社会的に安定していることや、安定志向が強く賃金だけを求める離職者数が少ない」ことをメリットに挙げる。

 2003年末にベトナム・ホーチミン市に開発拠点を開いたISBの竹田陽一海外推進室マネジャー(ISBベトナム社長)も「中国での拠点開設を検討していたが、ビジネス面でやりづらさを感じベトナムに切り替えた。現地スタッフは勤勉で、大きな問題はない」と話す。

欧米仕込みの仕組み持つ企業も

 ベトナムのソフト開発会社にはは大きく政府系と民間系に分かれるようだ。首都ハノイには政府系企業が多く、ホーチミン市をはじめ元々は市場経済圏だった南部は民間系が増える(56ページの表)。

 FPTソフトやCMCソフトといった政府系企業は、インフラ構築など大規模案件を手掛けたり、政府が戦略的に取り組むオープンソースソフトのベトナム語化を担当したりなどの実績がある。FPTソフトは既に日立ソフトや三洋電機のほか、大手通信販売会社ともパートナー契約を結び、それぞれに専用ルームを確保し始めている。

(志度 昌宏)