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 「以前は鞄にノートパソコンも入れていたが、2004年9月からは持ち歩かないようにした」と語るのは、NTTコムウェアの渡利謙だ。これは、セキュリティ対策から生まれた措置。「パソコンには顧客情報がたくさん入っている。もし鞄を盗まれたら、顧客に迷惑をかける可能性が高い」からだ。手書きの手帳も同様で、書き込みは相手のイニシャルだけに変え、自分の情報以外は一切手に入らないようにしているという。

 渡利の鞄の中でもう1つ目立つのが、エチケットブラシや鏡、ソーイングセットなどの身だしなみ用品だ。「たとえ徹夜明けでも、顧客の前で疲れた顔はできないし、シャツのボタンが取れそうなままでは、商談に集中できない。そんなときは、トイレに入って、自分で付けているんです」と笑う。

 キチッとした鞄の中身同様、営業スタイルにも無駄がない。とりわけ重視しているのがスピードで、“3・6・3のオペレーション”を心がけている。1年のうち、最初の3カ月で顧客のニーズを確認してビジネスを立ち上げ、次の6カ月で提案活動を終えて受注に持ち込む。残りの3カ月は、次の年のビジネスを考えるという。ダメな場合の撤退も早い。「勝てる可能性が高い商談と低い商談があれば、7:3とか6:4でと考えず、10:0で可能性の高い商談にパワーを集中する」。

 管理職としての渡利は、自ら先頭を切って行動することで、部下を牽引するタイプだ。渡利が入社した当時のNTTコムウェアの社員は、ほとんど営業経験がなかった。そこで実践したのが、(1)部下に商談の機会を作ってあげること、(2)成功体験を味わわせること、(3)自分がやってみせること、の3点だ。「経験がないと、なかなか顧客のところに行けなかったりする。与えられた商談の機会でも、成功すれば、それが自信になる」と話す。

 渡利は、営業が実力を付けるには、経験しかないと断言する。「場数を踏む中で、状況に応じた対応の仕方や判断力が身に付く」。機会を与えて部下を育てながら、売り上げ拡大に努めている。

渡利 謙(わたり けん)氏
NTTコムウェア
IT営業本部第三営業部 サービスビジネスユニット部長
1960年大阪府生まれ。早稲田大学商学部卒業後、1984年に日本アイ・ビー・エムに入社。関西で製造・装置産業の営業を担当し、約10年間の勤務を経て退社。1999年にNTTコムウェアに入社後は、本部長表彰を5回受賞するなどトップ営業として活躍。2004年4月より現職で、サービスビジネスユニットの責任者として受注拡大に取り組む。趣味はゴルフ、ダイビング、ドライブ。ポリシーは「やるからには勝つし、負けると思うことはやらない」こと。


(安部 偲=フリーライター)