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 組み込みソフトと業務アプリケーションが急接近し始めた。両方のビジネスを手がけるソリューションプロバイダは、これまでほとんど接点のなかった2 つの部隊が、共同で提案活動やシステム構築を進められるよう、様々な手を打ち始めている。
 異変の原因は、商談のユビキタス化だ。パソコン利用を前提とする従来のアプローチでは、ユーザーの要望に応えきれない。そういう案件が増えているのだ。“業務アプリケーション専業”のソリューションプロバイダといえども、協業などを通じて組み込みソフトとの「融合提案」で勝負しなければいけない時代がすぐそこに来ている。

(佐竹 三江)


 正社員だけで2250人の組み込み開発部隊を抱える富士ソフトABCの野澤宏会長兼社長は、「組み込み系とオープン系の両方をやっていることが今、当社の強力な武器だ」と断言する。2250人のうち1000人は上級エンジニア。「LSI(大規模集積回路)向けの純粋なファームウエア開発もできるし、業務アプリケーションの話もできる」のが野澤会長兼社長の自慢だ。

 コアも富士ソフトABCと同様に、組み込みソフトと業務アプリケーションの両方を手がける。組み込みソフト事業を管掌する崎詰素之取締役専務執行役員システムウェア事業カンパニー社長は、「市場がこれまでになく大きく広がった中で、両方の技術を合わせなければできないソリューションはたくさんある」と語る。さらに「まさにここが、今後市場で伸びるエリアそのものだ」と強調する。

 過去10年の間に、業務アプリケーションの世界ではOSやミドルウエアが発達し、ハードの特性を考慮しなくてもアプリケーションを構築できるようになった。しかしパソコン以外の端末、いわゆるノンPC端末がこれだけ普及した今、ユーザーの要望をかなえるには、標準化されていない端末でも提案に盛り込めるだけのインテグレーション力が求められる。

融合案件にこそ商機あり

 組み込みソフトを手がけるソリューションプロバイダは、着々と守備範囲を広げつつある。安川情報システムが、2004年秋に稼働させたコイン駐車場向けのシステムはその典型的な例だ。三輪雅志組込コンポーネント事業本部プロダクト統括部長はこの案件を、「オープン系SIを担当するシステムインテグレーション事業本部との初の大規模プロジェクト」と話す。

 もともとは組み込み系の商談だった。ユーザーの要望は「駐車場の集金状況や空き情報などを本部でいつでも把握できるように、車止めや集金機をモニターできる機器を作ってほしい」というもの。本部のアプリケーションは、付き合いのあるソリューションプロバイダに別途頼む予定だったという。しかし、安川情報の担当者がすかさず「うちがアプリケーションもやれば、つなぐ手間が少なくて済みますよ」と売り込んだことで、商談の規模が拡大した。

 同社でこの手の“融合案件”の開拓を率先して進めてきたのが、遠藤直人取締役組込コンポーネント事業本部長。「組み込み系と業務アプリケーションの融合で、新しいビジネス領域が開ける」と語る。2004年度に同社が獲得した融合案件の売り上げは約4億円。「今は取れたり取れなかったりだが、確実に取れるようになればビジネスは急拡大する。今の4億が40億になる」と遠藤取締役は意気込む。

足下で進む商談のユビキタス化

 富士ソフトABC の野澤会長兼社長は、こうした融合案件はあらゆるところにあると言う。

 「例えば、営業担当者が使うモバイル端末には、メーカー独自の仕様が必ずある。だから組み込み技術も必要だ。図書館向けのシステムでも、書籍にIC タグやバーコードを付けて読み込む部分では組み込み技術が要る。銀行のATM などで使う監視カメラの仕組みでは、カメラの制御に組み込み技術を使うほか、データ圧縮技術やデータセンター側の映像管理システムなども必要だ。まだまだいくらでもある」。

 多くのソリューションプロバイダが注目するトレーサビリティにしても、組み込み技術は不可欠だ。コアが北海道大学と共同研究の形で進めるプロジェクトでは、RFID(無線IC タグ)によるトレーサビリティシステムと電子天秤、そして管理用のアプリケーションを組み合わせた劇薬管理システムを開発した。

 日本システムウエア(NSW)が獲得した融合案件は、コインロッカーを携帯電話から操作できるようにするシステムだ。当初、ロッカーは専門のメーカーが提供する予定だったが、結局NSW がロッカー本体とロッカーを遠隔制御するためのインタフェース機能、そしてデータセンター側の管理用アプリケーションまでの大部分を開発した。「末端のハードまで押さえれば、将来ライセンスビジネスによる横展開の道も開ける」と、同社の中村恭一企画本部副本部長兼マーケティング部長は語る。

 製造機器やビル設備などを得意とする安川情報は、家電や光熱機器などをつなぐ標準ネットワークとして提唱されているエコーネットに期待する。照明機器や空調機器、電源設備や防犯用センサーなどを結び付けることで、光熱費の低減やセキュリティ、環境対策などを一体型で提案できるからだ。

 実際、全国に大型店舗をチェーン展開する流通企業で、この仕組みをテスト導入した。「今回は光熱機器に限った管理だが、それでも大きなコスト削減効果を提案できる。ユーザーは3年で初期投資を回収できる計算だ」と三輪統括部長は自信を見せる。