PR

 個人情報保護法施行から4カ月が経過した。ユーザー企業は、個人情報を外部に漏洩させない仕組み作りを急ぐ一方、顧客データの活用に今まで以上に意欲的になっている。顧客の氏名や住所などを流出させずに、どうやって営業活動を効率化し、顧客サービスの向上に結び付けるか。

 この矛盾した状況を解決することが、ソリューションプロバイダの知恵の見せどころ。NTTソフトウェアのように新しいアイデアを用いたソリューションも出てきた。セキュリティ対策やASP(アプリケーション・サービス・プロバイダ)など、持てる技術やノウハウを総動員したシステム提案が始まった。               

(中井 奨)


 「お客様には、このような投資信託の新商品はいかがでしょうか」。住友信託銀行では外回りの営業担当者が、PDA(携帯情報端末)で過去の取引や資産などの顧客データを参照しながら、個人顧客のニーズに合わせて商品を勧めていく。顧客データを即座に活用できることは外勤の営業活動で強力な“武器”となっている。

 住友信託銀行は個人情報保護法施行を目前に控えた2005年2月から、国内全店舗の52営業店で、外勤用のPDAを約700台も導入した。営業担当者は社内のCRM(カスタマー・リレーションシップ・マネージメント)システムから、訪問予定の顧客の氏名、住所、生年月日、投資状況などのデータをPDAにダウンロード。営業担当者は、顧客データを元にして顧客の属性や要望に応じたコンサルティングや提案を行っている。

 同行では顧客データを持ち出すことは原則禁止されている。仮に持ち出す場合でも、管理者の厳正な許可が必要だった。このため、営業担当者は外出先から電話で顧客データを、営業店に問い合わせて確認しなければならないこともたびたびあった。

 「銀行にとって顧客データ自体が商売の柱だ」。リテール企画推進部の岩田光宏主任調査役は、顧客データの重要性をこう語る。重要な顧客データを外部に漏洩することは絶対にあってはならない。その一方で、顧客データをうまく営業活動に生かさなければ、顧客サービス向上や売り上げの拡大は難しい。この矛盾を解決するため、同行はPDAを採用するに当たり、情報漏洩を防ぐためのセキュリティ対策を徹底した。

 このシステムの開発はイーシステムが手掛けた。まずPDA使用のログインに指紋認証を採用。持ち主の営業担当者の指紋以外でPDAのシステムを起動させることができない。さらにPDAには記憶媒体を搭載せず、メモリー上にダウンロードされた顧客データは、一定の条件で自動的に消去される仕組み。データの暗号化なども採用した。「PDAでデータを持ち出しても外部に漏れないように今考えられる範囲での最大限のセキュリティ対策を行っている。PDAの活用によって、営業担当者の活動の幅も広がった」と岩田主任調査役は話す。同行では今後、配置するPDAの増設も検討中だ。

商談のパターンは3つ

 CRMに詳しいIDCジャパンの梶田久司シニアマーケットアナリストは「ユーザー企業は従来のコスト削減から売り上げを増やすためのデータ活用にシフトしており、CRM市場のすそ野が広がっている」と話す。ユーザー企業は、顧客データの漏洩防止対策に神経を尖らせているが、一方で顧客データをビジネスで活用したいとする意欲は旺盛になっている。この相反する状況を解決してシステム提案に結び付けないと、ユーザー企業のIT投資意欲は後退してしまう。

 具体的な商談のパターンは3つに分かれる。1つ目は自社パッケージなどと外部のセキュリティ対策製品などを組み合わせた提案、2つ目は、最初からセキュリティ対策を備えているASP(アプリケーション・サービス・プロバイダ)サービスなどを活用した提案、そして3つ目は新しいアイデアを盛り込むなど個人の名前や住所などのデータを一切使わない新しいCRMシステムの提案である。