「SARS(重症急性呼吸器症候群)は、本当にいやなこと。長期化すれば、打ち合わせのため中国に行くこともできない。(影響は)予想がつかないので、早く何とかしてもらいたい」。NECソフトの関隆明社長は、SARSの影響について決算説明会の席上でこう語った。

 NECソフトによると、海外企業に外注しているソフト開発の割合は約5%、金額は20億円にすぎないが、2004年3月期には約8%、35億円に増加する見込み。このうち、中国のソフトハウスはその98%も占める。同社は現在、北京に拠点を置くソフト開発会社とネットワークを結んで、テレビ会議システムを利用しているが、今後は大連や上海の会社ともテレビ会議システムを使って中国出張を極力避ける方針。しかし、それでも詳細な打ち合わせをする時には中国に出向かなければならないこともあると見られ、抜本的な解決策を打ち出したわけではない。

 現在の状態がこのまま続くと、国内での開発の比率を高めることも検討せざるを得ず、「開発コストが上昇してしまう」と、同社幹部は不安を隠せない。中国衛生省の発表によると、SARSの死者は100人を超え、被害は拡大している。中国企業に頼る日本のIT企業への影響も深刻なようだ。(中井)