地方銀行64行が加盟する全国地方銀行協会は、12月1日から貸出先企業の精緻な格付けを支援する「信用リスク情報統合システム(CRITS)」の運用を開始する。昨年秋に地銀協が開発を表明していたもので、加盟行が持ち寄った100万社以上の企業データから、様々な切り口で信用・財務・取引などの情報を出力できるようになる。各地銀が取引先の破たん確率を推定するなど、取引先を格付けする作業を支援する。

 CRITSが提供するのは原則として統計情報だが、地銀協では取引先の財務スコアリングのモデリング手法なども提供し、加盟行が正確に企業格付けする手段も紹介している。地方銀行にアプローチするソリューションプロバイダにとっても、「CRITSと連携することで、独自の格付け手法を盛り込んだ分析ツールや格付け自動化/支援システムなどを構築できる」(地銀協)といった機会を得られるため、リスク管理システムの商談などでの有効なツールになりそうだ。

 地銀協は、従来も信用リスク情報をデータベース化していたが、債務不履行(デフォルト)の実績に対する情報は、規模や地域、業種など基礎的なものしかなかった。CRITSはBS(貸借対照表)/PL(損益計算書)などの財務情報、取引状況など、詳細な企業データを持つ。デフォルトの情報も、債務者区分や延滞日数、事象(代位弁済か法的破たんかなど)など詳細にし、きめ細かな分析が可能になった。加えて、財務スコアリングのモデル化、トータルで見た取引のリスクを測る「信用ポートフォリオ分析」といった機能を、1つのシステム上で備える点も大きな特徴だ。

 システム開発はNTTデータが受注し、約70台のIAサーバー(OSはLinux)上で稼働させている。加盟行とはNTT東西地域会社のIP-VPN(仮想私設網)で結んでおり、クライアント側はWebブラウザーを使ってアクセスする。現在のデータベースには、加盟行が主に2004年前半までに集めた初期の企業データが登録されている。今後は四半期ごとに企業データを毎回、更改していく。

玄 忠雄=日経ソリューションビジネス

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