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 日本公認会計士協会は3月15日、ITサービス業の会計監査を2005年3月期から厳格化するよう会員に書面で通知したと発表した。架空取引を使ったメディア・リンクスの不正会計事件などを受け、昨年12月から協会が検討を続けてきたもので、ITサービス業に特有の取引を引き合いに、取引の特徴や重点的に監査するポイントなどを示した。また、日本では、これらの業界特有の取引で売上高をどう計上するかが明確でないとして、企業会計基準委員会に早急に基準を設定するよう要請した。

 例えばソフト開発の取引では、対象物が無形で価値が測りにくい上、分割検収が一般的なので、外部から全体像が見えにくい。そこで通達では、得意先から入手した検査結果通知書を必ず確認するなどで、売上高の会計記録をチェックするよう求めた。コンサルティングサービスについても、請負契約ならば納品成果物と計画書/仕様書との整合性を確認。作業自体を対価にする委託型ならば、作業の管理表/報告書などが、確認の材料になるという。

 ハードやソフトなどを取り次ぐ「商社型」の取引については、顧客先での検査・導入の報告書や、ユーザーを含めた見積もりや仕様などの議事録で、売上高の正当性を確認する。また、帳簿を通過させるだけのいわゆる「スルー取引」、複数企業を経由して、基点となった企業に商品が戻る「Uターン取引」、複数企業がお互いに製品を販売し合うことで、在庫を持ち合ったり、お互いの売上高を増やす「クロス取引」は、「異常な商社的取引」として特に監査上の注意を求めた。

 ただし、スルー取引は信用枠の大きい企業が取引先の便宜を図って口座を貸す際にも使われるなど、これらの取引が「架空の売り上げを作る手段」とは限らない。そこで会計士協会は、国内の会計基準を作る企業会計基準委員会に売上計上の基準などの設定を要請した。取引の性格・種類ごとに「総額を売上高にするか、マージンのみを売上高にするか」などの基準を明確にすることで、架空売上高などの不正会計を排除したい考えだ。

 ただし2005年3月期には、この基準は間に合わない。会見で通知内容を説明した増田宏一副会長は「当面は米国の会計基準を参考にしてほしい」と語る(写真)。

玄 忠雄=日経ソリューションビジネス

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