ルーターの基本的な振る舞いは,受信したパケットのヘッダーの情報をチェックし,あらかじめきめておいたルールに照らしてそのパケットを適切なインタフェースに送り出すことである。
まずルーターは,パケットを受け取ったら入力側のフィルタリングを実行する。ここでルーター自身が受け取りを拒否したいパケットをふるいにかける。アクセス・リストと呼ぶフィルタリング用のテーブルにあらかじめ書いておいた内容をチェックし,ふるいにかけるべきパケットかどうか判断する。
次にルーターは,パケット中継を実行する。中継に際しては,経路制御を実行し出力先インタフェースを決める。インタフェースを決める手がかりにするのが,ルーティング・テーブルと呼ぶテーブル。ルーティング・テーブルにはあて先ごとにどのインタフェースに出力すべきか書いてある。
パケット中継の処理が終了するタイミングで,もう一度フィルタリングを実行する。2度目のフィルタリングは出力側フィルタリングである。ここでは,送信したくないあて先のパケットをふるいにかける。
なお,IPv4対応ルーターとIPv6対応ルーターのしくみで大きく違う点が一つだけある。それは,アドレス変換機能の搭載の有無である。IPv6対応ルーターは,通常,アドレス変換機能を搭載していない。アドレス変換機能は,アドレスが不足がちだったIPv4だからこそ必要になる技術だった。
IPv6の世界では,すべてのパソコンや情報家電にグローバル・アドレスを割り振る余裕がある。アドレス変換機能は,無用の長物というわけである。IPv4対応ルーターの設定の中でもアドレス変換機能は,特に複雑でわかりにくいものだっただけに,IPv6対応ルーターはユーザーにとって使いやすくなったと言えるだろう。