InternetWeek 2003の1プログラムとして開催されたIPv6 Technical Summit 2003であるが,多くの皆様にご来場をいただき,無事,終了することができた。まずは今回のTechnical Summitにご協力いただいた皆様にお礼を申し上げたい。

 年末のIPv6 Summitは今年で第4回となる。前回までは主にネットワーク屋として関わっており,ネットワークのことだけ考えていれば運営方面はそれほど気にしなくても良かったのであるが,今年は実行委員長という大役を仰せつかり,とにかくIPv6に関係する一大イベントとして形をととのえることに大変な力を使った(相変わらずネットワーク屋もやっていたが)。過去のSummitの実行委員長はインターネット業界/IPv6界でも著名な方々が歴任し,大成功を納めてきており,改めて彼らの偉大さを感じたわけである。

 今こうして会議が無事終わるまでは毎日が戦々恐々としたものであった。事前申し込み人数のチェック(ほぼ毎日会議のオンライン申し込み数を確認していた),プログラム構成,展示に関する調整などなど,とにもかくにも何とかまっとうできた,といったところである。一番気掛かりだったのはプログラム冒頭の実行委員長挨拶だったが,ご来場の方々は,朝が弱い方が多かったようで,その点では助かりました(笑)。

 そもそも私がIPv6に関わり始めたのは1996年頃,前Summit実行委員長の宮川晋氏が渡米するにあたり,氏が手がけ始めていたIPv6ネットワークの管理を引き継いだことからである。当時としては非常に広帯域であったT1の専用線でWIDEプロジェクトの6bone-jpに接続し,黎明期の各種実装(ルータ,KAMEなど)でIPv6ネットワークを構築,運用していた(そのころのルータの多くは既に存在せず,また,製造会社さえなくなっていたりするのは感慨深い)。

 その後, NTTの研究所としてもIPv6に力を入れるようになり,IPv6実験ネットワーク用アドレスpTLAを取得,ネットワークの規模を順次拡大していった。一時はヨーロッパ(アムステルダムIXに接続),米国(シカゴの6TAP,西海岸のPAIXに接続),日本(NSPIXP6に接続),マレーシアにIPv6専用の回線を敷設し,各国研究組織との相互接続を実施しているという広大なネットワークを運用していた。

 このネットワークを利用し,IETF会場ネットワークのアジア向けIPv6トラフィックを中継し,トラフィック解析を実施,その後のIETFにて報告を行うなどの活動を実施した。

 その後IPv6も商用ステージに入り,NTTグループとしてもNTTコミュニケーションズにおいて商用IPv6ネットワークの構築が進んだ。研究所としてのネットワークはその規模を縮小したが,現在もまだ稼働を続けており,IPv6に関係する各種活動に利用している(当然私もそのネットワーク内で生活している)。このような流れで主にネットワーク構築/運用といった観点からIPv6の世界に入り,過去のIPv6 Summitにネットワーク屋として参加していた,ということになる。

 さて,IPv6 Summitの話に戻る。今年のSummitと昨年までのIPv6 Global Summitとの違いは,「Global」でなく「Technical」であることだろう。

 昨年までは,年ごとに形式は少々違うが,国際的なイベントとして海外を意識し,講演者を海外から招待したり,海外からの参加者向けの同時通訳などを実施していた。また,取り扱う内容も技術的内容から社会学的内容,ビジネス的内容と幅広く,結果として2日間にわたるプログラムを組んでいた。

 それに対して今年は,IPv6の商用利用の進展をかんがみ,「ビジネス」Summitを別途大々的に開催することとし(2004年2月に開催予定),12月のSummitは規模を縮小,技術的な内容を濃くして国内技術者向けのイベントとして位置付けた。国内向け(日本語でいい),ということで私のところに実行委員長という役が来たという話もある。

 当初,規模を小さくするから実行委員長一人で回せるよね,という今考えると恐ろしい話もあったが,無理を言って伊藤公祐氏にプログラム委員長をお願いした(確か,伊藤氏がいない場での欠席裁判だった)。コンパクトによくまとまった,内容の濃いミーティングとすることができたのはひとえに伊藤公祐氏をはじめとする,プログラムの検討に関わって頂いた実行委員の方々のおかげである。

 また,今年のもう1つのポイントは,展示会併設の「Night Session」を設けたことである。協賛企業の最新IPv6製品の展示を中心としたこのセッションでは,まだ発売前の製品や,既に多くの場所で利用されているIPv6機器を実際に目でみて,その特徴や売りとなる点を説明員の方々に,懇親を深めながら伺うことができるようにした。運営側からの感想ではあるが,各ブースとも盛況で,参加者の皆様には有意義な時間を過ごしていただけたと思う。

 とにもかくにも,今年のIPv6 Technical Summitを無事終了することができた。参加した方々からも,肯定的な意見を聞くことが多く,ほっとしている。次の大きなIPv6関連イベントとしての,「Business Summit」にもぜひ注目していただきたい。2004年はIPv6に関しても,より多くの興味深い動きが予想される。私としても,今後,IPv6のいっそうの普及を目指し,利用技術,安定したネットワークの供給技術の研究開発を進めていくつもりである。

藤崎智宏
 1991年,NTTソフトウェア研究所入社。オブジェクト指向ソフトウエア開発技術の研究開発に従事するかたわら,共通設備のUNIXワークステーションの管理などを実施。その後,分散オブジェクト指向ソフトウエア技術を利用したネットワーク管理システムの開発に関わる。1996年頃よりIPv6インターネット構築,運用技術の研究開発を開始し,NTT研究所実験ネットワークの6boneへの接続および世界規模の実験ネットワークの構築/運用,NTT事業会社のIPv6商用化支援を実施。現在,IPv6をベースとしたユビキタス・ネットワークの利用技術に関する研究に取り組んでいる。