豊田 孝

 Windows XP出荷後ほぼ3カ月が経過しましたが,Windowsユーザーの多くは,今でも,次のような疑問を持っているのではないかと思います。

“Windows 2000とWindows XPの間には,実際,どのような違いがあるのだろう?”

 そこで,今回から3回に分けて,これまでの連載内容の復習も兼ねながら,この疑問への回答を探してみたいと思います。それではさっそく本論に入りましょう。

図1●第1補助プログラムをWindows XP上で実行した結果

内部フォルダからOSの違いを探る

 まず,例によって本日の第1補助プログラム「No12ListNameSpaces.exe」(こちらからダウンロードできます)をWindows XP上で動かしてみましょう。すると,「C:\No12Namespaces.txt」というテキスト・ファイルが作成され,図1[拡大表示]のようにその内容が自動的に表示されます。

 この表示情報を見ると「有効名前空間」という用語が見えます。これが本日のキーワードです。その個数は51と表示されており,作成終了時間のあとから,「数値=>0」から「数値=>50」で始まる51個の有効名前空間の情報が記載されています。この有効名前空間をWindows XPと2000とで比較することによって,二つのOSの違いが見えてくるのです。

 なお,この第1補助プログラム「No12ListNameSpaces.exe」は,「10行のプログラムで分かるWindows 2000/Windows XPの世界」の第9回(http://itpro.nikkeibp.co.jp/members/ITPro/ITARTICLE/20010712/1/)で紹介したプログラムの修正版です。

 有効名前空間がどのように違うのかは,これから見ていくとして,有効名前空間が何であるのか分からないと先に進めないことでしょう。ここでは,この用語の意味を次のように考えておいてください。

“有効名前空間というのは,Windowsシステムが現在内部で使用している,特殊なフォルダである”

 「名前空間」や「特殊フォルダ」と聞くと,一部の人は難解な印象を受けてしまうと思いますが,私たちが毎日使用しているフォルダと基本的には同じです。

 私たちは毎日のようにフォルダを作り,そのフォルダ内にWordやExcelなどで作成したファイルを格納しています。格納したファイルを後日自分自身で使用するにせよ,社内の同僚と共有するにせよ,私たちはフォルダやファイルに分かりやすい名前を付けています。また,ビジネス環境では,日々多数のファイルを作成することもあるため,検索効率を考えたフォルダ構成になっていると思います。このため,フォルダ構成を見れば,それを作成した担当者や担当チームの性格や仕事への取り組み姿勢なども分かってしまうのではないでしょうか。

 それと同じように,Windowsの内部フォルダ,つまり有効名前空間の構成を見ることによって,その作り手であるMicrosoftのOSの対する考えが分かってくるはずです。もっともXPの有効名前空間だけを見ていては難しいので,2000の有効名前空間と比較することによって,OSそのものの違いを探っていきましょう。

内部フォルダが九つ増えたWindows XP

 第1補助プログラム「No12ListNameSpaces.exe」はWindows XPだけでなくWindows 2000環境でも動作します。復習もかねながら,これら2つの環境で返される情報を比較してみることにしましょう。

 リスト1(a),(b)は,それぞれ私のWindows XP Professional(以後Windows XP),Windows 2000サーバー(以後:Windows 2000)で第1補助プログラム実行後に作成されたファイル「C:\No12Namespaces.txt」の先頭部分です。

 両者の「有効名前空間数」欄に注目してください。先ほど述べたようにWindows XPの名前空間(特殊フォルダ)は51個ですが,リスト1(b)のWindows 2000では42個。つまりWindows XPになって名前空間(特殊フォルダ)が9個ほど増えています。Windows XPになって機能が増えたことの表れです。

「ダイアルアップ接続」が消えた

 まだ皆さんのご記憶に新しいかと思いますが,MicrosoftはWindows XPの出荷にあたり,「Windows XPはブロードバンド時代のプラットフォームである」あるいは「Windows XPは常時接続時代に向けた新しいオペレーティング・システムである」などと宣言していました。こうしたキャッチフレーズとWindows XPの内部フォルダ構成はまったく無縁なのでしょうか? 実は,無縁ではないのです。その端的な証拠がリスト2(a),(b)です。

 これらは第1補助プログラムの出力結果「C:\No12Namespaces.txt」から「数値=>49」に関するくだりを抜き出したものです。リスト2(a)のWindows 2000では名前空間名は「ネットワークとダイヤルアップ接続」ですが,Windows XPでは「ネットワーク接続」へと変わっています。Windows XPは常時接続時代やブロードバンド時代のOSであるという認識のもとで,「ダイアルアップ接続」という表現が消えていたわけです。この変更はそのままコントロールパネルのフォルダ名称の変更に対応しています。

 「単に名前をちょっと変えてみただけに違いない」と思う方もいるかも知れません。しかし,一般ユーザの立場から言えば,日々目にするコントロールパネルの情報が意味もなく変更されたのでは困ります。また,Microsoftの開発者の立場に立つと,コントロールパネルとして公開した情報を意味もなく変更すれば,一般ユーザーを混乱させるだけではなく,「その開発姿勢は場当たり的ではないのか」と批判されかねません。

 こうしたことを考えるとリスト2(a),(b)に見る名前空間名の変更は,重要な意味を持っていると判断せざるを得ません。

“Windows 2000からWindows XPへのOSバージョンアップの過程で,ネットワーク関連機能が大幅に変更された”
と推測できるわけです。

「共有ドキュメント」に隠された新機能

図2●Windows XPでの第2補助プログラムの実行結果
 
図3●Windows 2000での第2補助プログラムの実行結果

 今度は,Windows XPになって名前が変わった特殊フォルダの中身をちょっとのぞいてみましょう。まずリスト3(a),(b)で名前空間名が「Documents」から「共有ドキュメント」へ変わっていることをご確認ください。「数値=>46」の部分を抜き出したものです。これも一見すると小さな変更のように見えますが,実は,これはたいへん大きな変更なのです。

 それを裏付けるのが本日の第2補助プログラム「No12ListNSFolderTree.exe」によりWindows XPで出力した図2[拡大表示]と,Windows 2000で出力した図3[拡大表示]です。

 第2補助プログラムの使い方はこの後で述べます。ここでは,このプログラムは指定した数値の有効名前空間の詳細情報を表示するものと考えてください。

 図2,図3は第2補助プログラムでの出力のうち,「フォルダ階層詳細」の部分を示しました。「共有ドキュメント」あるいは「Documents」フォルダの親(上位)のフォルダは何か,子(下位)のフォルダは何かを示しています。見比べて分かるように親フォルダからして両者では違っているのです。

 図2のWindows XPでは「共有ミュージック」や「共有ビデオ」などの子フォルダが追加されていることも分かります。ご承知のように「共有ドキュメント」「共有ミュージック」「共有ビデオ」などのフォルダ名称は,Windows XPのグラフィカル・ユーザー・インタフェース内で使用されています。

“Documentsから共有ドキュメントへの変更は,単なる名称変更ではなく,Windows XPに新機能を追加するための内部的な変更を伴ったものだった”
のです。

第2補助プログラムの使い方

 それでは最後に本日の第2補助プログラム「No12ListNSFolderTree.exe」(こちらからダウンロードできます)の使い方を説明しておきます。この補助プログラムは,第1補助プログラム「No12ListNameSpaces.exe」の出力情報に依存しますから,使用する前に第1補助プログラムを実行しておく必要があります。使用手順を次に示します。

ステップ1:第1補助プログラム「No12ListNameSpaces.exe」を実行する
ステップ2:作成される「C:\No12Namespaces.txt」ファイルから,関心のある名前空間名を見つける
ステップ3:その名前空間名の「数値=>」欄に示されている数値をメモする。例えば,「共有ドキュメント」名前空間を選択した場合,「数値=>46」の「46」をメモする
ステップ4:第2補助プログラム「No12ListNSFolderTree.exe」を起動する
ステップ5:図4[拡大表示]のような初期画面が現れたら,メモしておいた数値(例えば,46)を入力し,OKボタンをクリックする

図4●第2補助プログラムで数値を入力する
 
図5●ステップ5で数値「0」を入力した場合(その1)
 
図6●ステップ5で数値「0」を入力した場合(その2)
 以上の操作が完了すると,必要情報が収集され,自動的に画面に表示されてきます。詳細は次回触れますが,第2補助プログラムの動作の一部は制限されています。例えば,ステップ5で数値「0」を入力すると,図5[拡大表示],図6[拡大表示]のような画面が表示されてくるはずです。第2補助プログラムは,収集データが多量の場合,収集処理を途中で打ち切っているのです。

 このように表示される情報は一部制限されていますが,補助プログラムの出力はシステム管理者,プログラム開発者,社内教育担当者にとっては結構貴重な情報ではないかと思います。なお,補助プログラムの実行は自己責任とさせていただきます。

次回は...

 本日は,補助プログラムが表示する具体的な情報を頼りに,Windows 2000からWindows XPへの変化を探ってみました。本日紹介した第1補助プログラムと第2補助プログラムを併用すれば,ほぼすべての特殊フォルダ情報を表示させることができます。一部の特殊フォルダは思いもかけないような情報を返してきます。後日お時間のあるときに,ぜひいろいろ試してください。

 なお,第1補助プログラム「No12ListNameSpaces.exe」が作成してくれるファイルは小さなファイルですから,ぜひプリンタで印刷し,必要なときに参照するとよいでしょう。Microsoft開発者が考えたフォルダ構成であり,Windows 2000とWindows XPに関する機能紹介そのものなのです。このため,表示されるフォルダ構成情報を見てしまえば,Windows 2000とWindows XPの機能概要がかなり分かってしまいます。フォルダ構成の一部でも変更されていれば,それは機能が変更されていることを意味します。

 次回は,例えば今回,発見したネットワーク機能の変更というのは具体的にはどのような変更なのかを把握する方法を紹介したいと思います。その視点は,

“有効名前空間は,特殊なフォルダ・オブジェクトを管理するために用意された空間である”
というものです。補助プログラムを動かしながら,どういう意味か考えてみてください。

 それでは次回をお楽しみに!